「初号機のシンクロ率上昇、280、320、駄目です止まりません。


シンクロ率400%超えました」


ウオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーー!!!!!!


暴走した初号機の力は凄まじく、圧倒的な力で第14使徒『ゼルエル』に押し迫る。














WANDERING CHILD 第弐拾弐話














暴走した初号機は獣じみた四足歩行で使徒ににじり寄る。

それまで零号機と弐号機を一方的に蹂躙していたゼルエルが、まるで恐れるかのような仕種を見せた。

初号機はその第14使徒の体を力任せに押さえつけた。

そして、その口を大きく開くと使徒の体に噛み付く!引きちぎる!!咀嚼し、飲み下す!!!

「初号機が使徒を喰ってる!?」

その現実離れした、それでいて奇妙に生々しくおぞましい光景にミサトは声を絞りだす。

それは、エヴァがロボットのようなものではなく、人造人間である事を思い出させる光景であった。

思わずマヤが嘔吐してしまったのもうなずける。

「そんな、S2機関を自ら取り込んでいるというの?エヴァ初号機が……」

よりエヴァについて知っているリツコは、また別の理由で戦慄していた。

やがて盛り上がる初号機の肉体。その内圧に耐えかねたように弾けとぶ装甲板。

「あれは装甲板ではないの。

エヴァ本来の力を押さえ込む為の拘束具が、今、自らの力で解かれていく……」

ウオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーー!!!!!!

再び放たれる咆哮。魂を揺さぶられるようなエヴァの咆哮。

「始まったな……」

「ああ。全てはこれからだ……」

その叫びにまぎれるように、ゲンドウと冬月は小声で囁きあっていた。



<第1日>



発令所に鳴り響く警告音。

「やはりダメです。エントリープラグ排出信号、受け付けません」

暴走した初号機がその動きを止めると、今度は逆に一切の信号を受け付けなくなった。

発令所では未だ搭乗しているシンジを助けようと、必死の努力がなされていた。

「プラグの映像回路、繋がりました。主モニターに回します」

やがて努力の甲斐があり、プラグとの映像が復帰する。

モニターにエントリープラグ内の様子が映されると、そのショッキングな映像に発令所にどよめきがおこった。

無人のプラグには、中身の無いプラグスーツだけがL.C.L.にたゆたっていた。



ここは何処だろう。

どうして、僕は……

回想する。

僕は逃げなかった。アスカのシンクロ率は少し下がっていたけれど、弐号機も零号機も万全だった。

ミサトさんも事前に迎撃の準備を整えていた。

ジオフロントに侵入を許す前に迎撃する事が出来た。

それなのに……

第14使徒『ゼルエル』。その力は強大だった。

結局、暴走して……

そうか、僕はまたエヴァに取り込まれたのか……



<第2日>



甦る映像。

両腕を切断された弐号機。そして、その頭までも……

「……ん?……あ……こ、ここは?

……そっか、アタシ……」

気が付いたアスカの声には、落胆の色が濃くにじみ出ていた。

その天井は、穢れを許さないかのような白。

回りを見回すが、壁も床もシーツも全てが白かった。

ここは病室。

……くそっ!何も、何も出来なかった。

その唇が、キッと固く結ばれる。

その時、白一色の部屋に青い色を見つける。

「アスカ、大丈夫?……無理しないで」

「レイ……」

アスカは、全身の緊張がほぐれるのを感じていた。

前日のシンジとのやりとり。初めての戦闘での大きな負傷。

目覚めてすぐに目に入る、見慣れぬ天井。

ふうーーー

大きく息を吐きだす。

「それで、使徒は?」

アスカの思考がようやく動き始める。

自分は戦闘中に気絶したのだ。

もし第7使徒戦のように何らかの方法で使徒を足止めしているのなら、寝ている場合ではない。

「使徒なら初号機が倒したわ」

その言葉に安心する反面、昨日のシンジの話が甦る。

「ハン!さっすが無敵のシンジ様ね。すごい!素晴らしい!強い!強すぎる!!

アイツはね、アタシがやられる事も、自分なら勝てる事も知っていたのよ。

あのバカは自分がヒーローになりたいだけなのよ!」

感情を爆発させるアスカに、しかしレイは冷静に訂正する。

「倒したのは初号機で、碇くんじゃないわ」

要領を得ないアスカ。

「同じことじゃないの!それとも初号機が勝手に動いたとでも……まさか暴走!?」

再びヒートアップしかけるも、昨日のシンジの話に度々出てきた単語に思い当たる。

「碇くんは勝てなかったわ。

使徒を倒したのは暴走した初号機」

感情を感じさせない声で淡々と話すレイ。

「それで!シンジは!?」

冷静さを欠くアスカはそのことに気付かない。

「碇くんは……」

初めて感情を見せるレイ。

それは隠し切れない不安と恐怖。

「レイ?」

さすがに訝しるアスカ。

「……碇くんは初号機の暴走時にシンクロ率が400%を超えて、初号機に取り込まれたわ」

「えっ!?」

その内にある思いを押さえ込むように、レイはその表情を消す。

「初号機の活動停止が確認された現在も、シンクロ率は400%を超えたまま。

エントリープラグ内にはプラグスーツだけがL.C.L.に浮いていたそうよ」

「なによ、それ!」

頭を振り乱す。

「わかんない!わかんない!わかんない!!!」

アスカの声が静かな病院にこだました。



<第3日>



「大丈夫よ!

アイツはこうなる事も知っていたんだから、きっと無事で戻ってくるわよ」

アスカ、レイ共に精神的に不安定であると判断したミサトは、自らが残務処理のために容易に帰宅できない事もあり、どちらかの家に泊まるように指示を出していた。

そのレイはダイニングのシンジがいつも座る席に腰をかけたまま一言も発することなく、紅茶が冷めるのに任せていた。

「知っていた?」

必要最低限の会話以外では、口を開いたのは恐らく本日初めてだろう。

「この前の戦闘の前日にね、シンジが言ってたのよ。

アイツは全部知ってたのよ。

あの日、使徒が来ることも、アタシが勝てないことも。

……アタシのママの事も」

ピクンと震えるレイ。

(そう、碇くんは知っていたのね。

……たぶん、私のことも)

やはり、知っていたのだ。レイは思う。

アスカの歓迎パーティーでの一件以来、常にどこかに燻っていた疑問が氷解していくような気がした。

「レイ?」

「……ごめんなさい。今日はもう寝るわ」

そう言って、レイがシンジの居ない間に使う事になったシンジの部屋に入っていった。

「……」

アスカは耳を澄ませてみたが、ふすまの向こうからは物音一つしなかった。



<第4目>



ミサトは先日の戦闘以来、久しぶりに帰宅してきた。

数々の戦果を上げてきた事実上のエースパイロットであるサードチルドレン、碇シンジの離脱。

それに対して残る使徒は3体。

謎の第17使徒を含めて、特殊な能力を持つ強力な使徒ばかりだ。

そして、その後に控えている量産機との戦い。

はっきり言ってミサトは忙しかった。

それでも、シンジ救出の方針が決まったのでアスカとレイに教えようと、時間を捻出したのだ。

しかしレイはアスカと顔を会わせ難かったこともあり、たまには掃除もしないといけないと言って帰っていた。

そのことを聞いたミサトは一瞬顔をしかめるも気を取り直すと、後でレイに伝えるようにと前置きしてから話し始めた。

これまた久しぶりの缶ビールを横に並べて。



「サルベージ?」

アスカはその耳慣れない言葉に、思わずミサトに聞き返す。

「そう。シンジ君の体と魂は形を変えてあのL.C.L.のなかに存在しているらしいのよ。

そこで肉体を再構成して、魂を定着させるらしいわ。

……上手くいくといいのだけれど」

『理論的には可能だとしても、何事もやってみなくちゃ分からない』

これはエヴァというこれまでの常識から外れた兵器を指揮して、使徒というさらに常識から大きく外れた敵を迎え撃ってきたミサトの信条である。

心配で不安げな顔になる。

「大丈夫よ。

アイツは全て承知だったんだから」

その言葉に、ミサトは拍子抜けしてしまった。

「なーんだ。アスカもシンちゃんから聞いてたの?

アタシよりも詳しく聞いてるみたいだし。……そっか、アスカがそうなのね」

アスカの話から、シンジは何らかの確信を持っていたのだと判断した。

ホッとしたミサトは、例のニヤニヤした笑いを顔に浮かべる。

「ミサトも知ってたっての?シンジが未来から来たってこと」

アスカの言葉にミサトの笑顔が固まる。

「え!?ちょっと、アスカ。今、なんって言ったの?」

「なに、言ってるのよ。

シンジが未来から来たこと、とっくに知ってたんでしょ!?」

シンジの話は軽々しく話せることではない。

まして、その世界でアタシに犯したという、その罪の告白。

理性の部分ではそれを理解していた。

でも、それでも、せめて最初に教えて欲しかった。

それがアスカの偽らざる思いである。

シンジにとって、アタシはその程度の存在なのだ。

やり場の無い怒りが込み上げてくる。

アイツは、アタシのこと……くっ!

「私はどういった使徒が何時ごろ来るのか教えてもらっただけよ。

どうして知っているのかは教えてくれなかったわ。

……最初に教えたい人が居るからって」

ミサトは人をからかう時のそれとは違う、優しい笑みを浮かべる。

「私の知る限りじゃアスカ、あなたが最初よ?」

「なっ」

思わず赤くなるアスカ……

それでも、だ。

何故、今更なのか? その思いはぬぐえない。

そのアスカの表情になにを見たのだろうか? ミサトが優しく諭すように話し掛ける。

「アスカ、シンちゃんにお母さんのこと話した?」

その言葉に、アスカは鼻を鳴らす。

「ハン!何でそんな事アタシが喋らなきゃいけないのよ!

アイツは全部知っていたのよ?

アタシが話そうとしたら、アイツが先に喋りだしたのよ!!」

吐き捨てるアスカ。

だが、ミサトは安心したように優しい笑みを浮かべる。

「アスカ。第8使徒戦の後に温泉に行った時のこと、憶えてる?」

「ええ」

「あの時に私の父親のこと、二人に話したわよね?

私は使徒を憎んでいたわ。ちょっと異常なほどにね。

ずっとね悩んでいたのよ。

あなた達に戦わせて、それは私の個人的な復讐のための道具にしているんじゃないかって。

悩んで、悩んで、やっぱりこのままじゃいけないって思って。

それであの時、話すことにしたのよ」

激高していたアスカも、いつのまにかミサトの話をじっと聞いていた。

「シンジ君が私に話してくれたのはその直後、温泉から帰って直ぐだったわ。

正直、もう少し早く話してくれていたら、もっと作戦も立てられたのに。

そんな風に思った事もあったわ。

でも、今では感謝してる。

もっと早い時期に使徒の話を聞いたらどういう行動をとったのか、自分でも分からないわ。

たぶん、自分をコントロールできなかったでしょうね。

使徒が来るのを待っていられたかどうか。

そして、強引な攻撃の命令を出して、あなた達を死に追いやったかもしれない。

最悪、……使徒のスパイだとかなんとか言って、シンジ君をこの手で殺していたかもしれない」

あまりな話の内容に、アスカは顔をしかめる。

その視線を受けて、ミサトはこめかみの辺りを掻きながら苦笑を返す。

「今は大丈夫よ。

ま、完全に吹っ切れる事は一生無いんだろうけど。

うーん。なんて言うか、どっか逃げていたのよね。

父の事、使徒の事、……冷静に考える事ってなかったのよ。

狂気にも近い怒り、それと後……なんだろ?

とにかく、感情が先走っちゃって。

いいえ、それを言い訳に事実を受け止める事から逃げていたのよね」

驚くほど穏やかなその顔は、ミサトが過去を乗り越えたことを納得させるものだった。

「アスカは、お母さんの話を聞いてどう思ってるの?」

「えっ?」

ミサトのあまりにもショッキングな話を聞いていたアスカは、突然話をふられて途惑う。

何よりシンジのことで頭がいっぱいで、今まで母親のことを深く考える余裕がなかったのだから。

「えーと」

口篭もりながら、必死に考える。

「いろんな気持ちが複雑に絡み合っているような感じで、一口じゃ上手く言えないんだけど……」

考えながら慎重に言葉を選んでいく。

「なんだろう? 一番強い思いは……感謝かな?」

アスカはそれほど多くは無い、しかし強く心に残っている母親との思い出を思い浮かべる。

「アタシのことを、ずっと見守ってくれていたんだなって。

アタシと一緒に、ずっと戦ってくれていたんだなって。……うん、やっぱり感謝の気持ちかな。

それとママは近くに居たんだって、喜びの気持ち」

本当に嬉しそうなアスカ。

だからこそ、どうして早く教えてくれ無かったのかという思いも強い。

ミサトは、そんなアスカの様子を優しく見つめる。

「シンジ君、心配していたわよ。

アスカはエヴァのエースパイロットであること、そして弐号機に固執していた。

そして、……母親のことでトラウマがある」

目を見て話すミサトの真剣な言葉に、アスカは一語一語うなずく。

「下手に話したら、アスカは弐号機に依存しきってしまうんじゃないかって。

戦闘によって弐号機が壊れる可能性があるわ。

今回のように負けることだってある。

そんな時、アスカが壊れちゃうんじゃないかって」

「そんな……」

そんなことはない。その言葉を飲み込む。

そうだ。どうして自分はママの事でこうも冷静でいられるのだろうか?

自問してみる。

少し前までの自分なら、……十分にありえる話だった。

「シンジ君が、アスカにどんな風に話したかは分からないけど」

ミサトはそう言って前置きする。

「アスカ。あなた、たぶん壊れたのよ」

「え?」

思わずミサトを見返す。

「アスカの話だと、シンジ君は一度未来を経験している。そうよね?

そのシンジ君が具体的な例を出して、壊れるかもしれないって心配した。

恐らくシンジ君は、アスカが壊れたのを憶えてるのよ。その、未来の記憶でね」

その言葉は妙に納得できるものだった。

自分は先の戦闘で使徒に敗れた。

目覚めたときは悔しさでいっぱいだった。

だが、それは使徒に負けたことにではなく、何も出来なかった自らの不甲斐なさに対してである。

この戦いは負けることの許されない戦いだ。

だが、実際問題として全ての戦闘で勝利を収める事は不可能だ。

要はサードインパクトさえ起こさせなければ、人類にとって負けではない。

如何にサードインパクトを起こさない範囲で、次回の戦いに繋げる負け方が出来るか。

そこが問題なのだ。

だが、日本に来たばかりの自分が果たしてそう考えられるだろうか?

答えは恐らく否だ。

やはり、そうなのだろう。



自らの考えに没入するアスカを見ながら、ミサトはシンジが過去から帰って来たという事について考えていた。

(そう言えばシンジ君、加持のヤツに死なないように釘をさしていたのよね……)

真実を追い求め、飄々とした態度で危ない橋を渡っている男のにやけた顔が浮かぶ。

(素直に人の言う事を聞くタイプじゃないわよねえ、あのバカは。

……これは覚悟しておいた方がいいかもしれないわね)

シンジの話しを聞く前から、死と隣り合わせの生活をしている事は知っていた。

まったく覚悟していなかった訳ではない。

ただ、そのヴィジョンがよりクリアになっただけなのだ。

ミサトは黙って、温くなった缶ビールを飲み干した。

未来で死んだであろう男の冥福を祈って。



(それにしても)

ミサトはさらに考えを進める。

シンジはどうやって未来から過去に戻ってきたのだろうか?

可能性は二つある。

一つはシンジ自身の何か特別な力で、もう一つは外部からの何らかの力によって。

シンジの今までの行動を振り返ってみると、過去の記憶を有効に活用しようと頑張っていたことが分かる。

しかし何らかの特別な力を使っていたとは思いにくい。だとすれば後者の可能性が強いだろう。

つまり、シンジのアドバンテージは「これから起こる過去の記憶」この一点だけという事になる。

まして未来のことがわかるのではなく、未来の記憶であるならばこれから彼の記憶とどんどん変わってくる可能性も高くなる。

なぜなら彼自身がその記憶と違った行動をとっているであろうからだ。

そして……

「シンジ君が未来から来たのだとすると、このサルベージ、楽観は出来ないわね」

アスカが顔を上げる。

「どうして?」

「考えてもみて。

確かにシンジ君は未来から帰ってきたという異常な経験をしている。

でも、彼自身に特殊な能力があるわけではないわ。

仕方なく初号機に取り込まれたか、或いは彼なりの根拠があるとしても、それは前回も助かったというだけに過ぎないはずよ」

ミサトの言葉に、アスカは考える目になる。

「例え一度成功したのだとしても、今回も成功するとは限らない。

成功の確立そのものは変わらないわ」

そうなのだ。未来から来たという事はそういうことなのだ。

「何を考えているのよあのバカは!」

その事に思い至らなかった自分にも腹が立つ。

「知っていたんなら、もうちょっと上手くやれたでしょうに」

苛立つアスカに、しかしミサトはゆっくりと首を振る。

「アスカ。あなた今までシンジ君が活躍したのは未来の記憶があるからだと思っているでしょ?」

「違うの?」

不思議そうな表情になる。

「私はこの世界に入って、もう7年目になるわ。

訓練期間なら、アスカはそれ以上よね?」

「ええ」

「それに対して、シンジ君は一年近い実戦経験があるだけで、普通の中学生よ」

アスカには、ミサトの言わんとする事が理解できなかった。

「ただの実戦経験とは違うわ。まったく同じ戦闘を繰り返しているのよ」

「何度も繰り返して試行錯誤をして正答を探したのならともかく、たった一度繰り返しただけなら十分な情報を持っているのに過ぎないわ。

そしてそれを生かすための訓練をしていないシンジ君にとって、それは私達に対するはハンデにもならない」

ミサトの言う事も、分かるような気がした。

だが、それでももう一度やり直しているのなら、もっと上手くやれるのではないかと言う思いも残っていた。

「アスカ、戦術シミュレーション、やらなかった?」

アスカはうんざりとした顔になる。

「散々やらされたわ」

その様子にミサトは一瞬、苦笑する。が、すぐに表情を引き締める。

「同じ状況で何度もやらなかった?

そのとき、二度目は必ず一度目よりいい結果を残せた?

特に、十分に訓練を積む前はどうだった?」

「……」

そうか、シンジは必死にやっていただけなのだ。

シンジは苦しんでいただけなのだ。

(それをアタシは……)

アスカの顔が後悔に歪む。



「ミサト、どうしよう。アタシ、酷いこと言っちゃった。

もし、シンジが帰ってこなかったら……

アタシ、アタシまだシンジに謝ってない……」

泣き崩れそうになるアスカをミサトは抱きとめる。

「私は、最悪の時のことも考えなくちゃいけない。

それが私の役目だから。

でも、アスカはシンジ君が帰ってくるって信じなきゃいけない。

たぶん、それがアスカの役目、そして一番の罪滅ぼしよ」

鼻をすすりながらアスカが微かに頷くのをミサトは感じていた。





つづく





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