「シンジは男の子だもんね」
・・・眠れない。
「退院したらギュッと抱き締めさせて」
・・・眠れない。
「シンジ」
だぁーーーーーーっ!!
なんで母さんの顔が浮かぶんだよ!!
母さんをエヴァの中から解放したその日の夜。
僕はなかなか寝付くことが出来なかった。
うぃんぐ・おぶ・ふぉーちゅん
〜へっぽこじっけんSS2・碇君の家庭の事情?〜
*注意!!このSSは本編と全くもって関係ありません。ついでにキャラがちょっと壊れているかも・・・
だから読むときには気を付けてね。それじゃ!
今朝の寝覚めは最悪だった。
と言うより寝ていない。
一睡もしていないんだ。
寝ようと思って目を閉じると必ず母さんお顔が浮かんでくるので、その度に起き上がってを繰り返していた。
「おはよう・・・・・・碇君、どうしたの?」
「あ、おはよう、綾波」
「・・・顔色が悪いわ」
「そ、そう?気のせいじゃないかな」
まじまじと綾波が覗き込んでくる。
距離があと数p。
鼻と鼻がぶつかりそうな距離だけど・・・どうしてだろう?
「母さん・・・」
「え?」
「な、なんでもないんだ!す、すぐにご飯用意するよ」
綾波の顔に母さんの顔がダブって見えた。
ここで重要なのは綾波じゃなくて、僕は母さんが近付いてきたと錯覚して緊張したって事だ。
・・・何考えているんだ、僕は。
母さんの面会ってたしか・・・九時からだったかな・・・
でも学校あるし・・・・・・
「来てしまった・・・」
僕は学校に行くつもりで家を出ていたのに、顔を上げたら病院の前に立っていた。
振り返って学校に向かい直そうと思っているのに、足の裏が張り付いたように・・・・・・・・・
ええい!
自分に正直になろう!
母さんの事が心配で顔が見たかったんだ!
うん、そうだ!
それだけ・・・・・・・・・のはずだよな?
面会時間開始まで少しあったのだが、僕がエヴァのパイロットだということもあってか、多少の融通は利かせてもらえることになった。
学校に行っている時間だというのも訓練が多かったり、僕自身も昨日戻ってきたばかりだったのであまり怪しまれなかったようだ。
う〜ん、エヴァのパイロットで助かったなぁ。
コンコン
「は〜い」
「ぼ、僕だけど・・・」
「あらシンジ?ちょっと待ってちょうだい。着替えている途中だから・・・」
着替えと聞いてドキンと心臓が高鳴った。
だ、だめだ・・・頭の中で妄想が・・・
僕はドアに手をかけた状態で凍り付いていた。
どれだけそうしていたのかよくわからないが、僕はドアに手をかけていなかったらその場でゴロゴロ転がっていたかもしれない。
「もういいわよ」
「う、うん」
深呼吸して部屋にはいると、母さんは普通の服を着てベットに腰掛けていた。
思わずボーっとその姿に見入ってしまう。
見入る?
そんなバカな!
あれは母さんなんだぞ!?
「おはようシンジ。今日学校はどうしたの?」
「え、えーっと・・・その・・・母さんの様子を・・・その・・・」
「私の心配してくれたの?嬉しいわ」
微笑む母さんの顔。
どう見てもミサトさん達より若いよな。
「で・も・」
微笑んだまま母さんは僕の数p手前まで詰め寄ってくる。
朝、綾波に覗き込まれたときと似てるけど・・・でも全然違う。
「学校をサボっちゃダメよ」
「・・・うん」
「どうしたの?顔が赤いけど。もしかして熱があるんじゃないの?」
「あっ・・・」
母さんは自分の額を僕の額にくっつけてきた。
僕の心臓は痛いくらいに自己主張を繰り返しているし、全身から汗が噴き出している。
けれどそれを振り払うこともできなくて。
「ちょっと熱いわね。ちょうどいいから診察を受けてみたらどうかしら」
「だ、大丈夫だよ。全然平気!そ、そうだ、ユイナはどうしたの?」
「ユイナちゃん?ユイナちゃんは朝いちでリツコちゃんと一緒に本部に行ったわよ」
「そ、そうなんだ」
会話が途切れてしまった。
気まずい。
狭い病室に母さんとふたりっきり。
ふたりっきり?
・・・はっ!
「ダメだダメだダメだダメだッ!!」
「どうしたのシンジ?何がダメなの?」
「え・・・な、なんでもないよ」
「クスクス、おかしなシンジ」
それから僕はこれまであったこととか、取り留めのないことを壊れたロボットみたいに喋り続けた。
喋っていないと何か余計なことを考えてしまいそうだったのだ。
僕が話し続けている間、ずっと穏やかな微笑みを浮かべて時々相槌を打ってくれていた。
一通り話し終えるとちょっと疲れてユイナが居たベットに腰をかけた。
ふとユイナが居なくてよかったなんて思った自分に自己嫌悪。
「ねぇシンジ」
「な、なに?」
「どうせもう学校には行かないんでしょう?だったらこの街を案内してくれないかしら」
「でも・・・いいの?」
「なんのために着替えたと思っているの?もう退院していいって言われたのよ」
「そうなんだ。わかったよ」
素っ気なく答えていたけれど、そのときもまた心臓がバクバクいっていた。
「それじゃっ、いきましょう!」
「・・・って、この手は何?」
「何って・・・嫌?」
手を繋いできた母さん。
すべすべとした感触が・・・・・・って、そーじゃなくて!!
そんな縋るような目で見られたら嫌だなんて言えないじゃないか。
「嫌じゃないよ・・・」
「そう、よかった。ろくにあなたと手を繋いであげることもできなかったしね」
ニコニコとしている母さん。
街に出てから、僕と母さんが手を繋いでいる図は他の人から見てどう見えるんだろう、と思った。
親子?
ダメだ、これは歳が近すぎる。
姉弟?
・・・今度は少し遠いかな。
恋人?
・・・アハハハハハッ・・・無いよなそんなこと。
じゃあなんで苦しいんだろう・・・
「ほらほらシンジ、早く行きましょ♪」
楽しげにしながら僕の手を引っ張っていく母さん。
取り敢えず考えるのを止めて、この時間を楽しもう。
ん?楽しむって少しおかしいような気が・・・まいっか。
母さんが笑ってくれるなら僕は何だって・・・
案内と言っていたけれど僕達が回ったのはデパートや映画館だった。
まるでデートだなと思ったときに、急に恥ずかしくなってしまった。
試着してはしゃぐ母さん。
デパートの屋上でアイスを食べている母さん。
映画を見て涙を流す母さん。
喫茶店で向かい合い、微笑んでくれる母さん。
そのどれもが新鮮で、僕は終始頬が緩みっぱなしだった。
第三新東京市が一望できる丘の上。
夕暮れ時に僕たちはここを訪れていた。
地面からビルが生えるという、この街独特の光景。
人間の英知、そしてエゴの塊の街。
その街を見下ろす母さんの横顔を見たときに、僕はつい「ユイ・・・」と呟いていた。
「シンジ?どうしたの急に」
母さんは酷く驚いた様子で僕を見ている。
その視線にハッと我に返り、僕は母さんより前に出て夕日を見た。
しばらくの間は母さんは不思議そうな顔をしていたけれど、急に柔らかい表情になって腕を絡めてきた。
僕は驚いて振り解こうとしたが、案外と母さんの力は強かった。
「母さんこそどうしたのさ」
努めて冷静に。
内の動揺を悟られないよう必死に声を抑えた。
「・・・夕日が綺麗ね」
「答えになってないよ・・・」
「いいの。しばらくこうしていましょう。息子とこんな事出来るのも若いうちだけなんだから」
で、僕らは太陽が沈むその時まで、ずっとその場を動くことはなかった。
翌朝も僕は寝不足だった。
前にも増して母さんの笑顔が張り付いてしまっていて、寝られたものではなかったのだ。
その理由は昨日のこともあるが、同じ家に母さんが寝ているという事の方が大きい。
「おはようシンジ。いつもこんなに早いの?」
台所に立っている母さんの姿はまさに理想的というかなんというか・・・
家庭を持つならこういうふうに朝御飯を作っている後ろ姿をぼんやりと眺めていたいなぁ・・・
それでいきなり後ろから抱き締めたりして・・・・・・・・・・はっ!?
な、何を考えているんだ!
「どうかしたの?ボーっとしちゃって。やっぱり熱があるんじゃないの?」
「あ、ううん。大丈夫だよ。それに早く起きてきたのは、いつも僕がご飯を作ってからさ」
「そう。じゃあ今度はシンジのご飯を食べてみたいわね」
朝っぱらからその笑顔は反則だよぉ・・・(T T)
「碇君・・・何悶えているの?」
あう・・・なんか昨日よりも視線が冷たいよ。
綾波が怒っているような気がするんだけど・・・気のせいかな?
「さぁ、二人とも。朝御飯にしましょう」
「・・・はい、お母さん」
「う、うん」
昨日すったもんだあった末に、僕と綾波が母さんに引き取られと言う形で落ち着いた。
引き取られると言ってもマンションは同じで、部屋はミサトさんの部屋の隣だ。
実質的には大した差がない。
そのうちユイナやアスカも食事のために・・・あ、起こしに行かないで大丈夫かな?
この心配は杞憂に終わり、数分後にユイナがアスカを引きずって現れた。
よかったよかった。
さて今日こそは学校へ行かなくちゃ。
みんながどんどん出ていって僕が最後にドアをくぐろうとしたときだった。
「シンジ、行って来ますのキスは?」
思わずずっこけた。
ちょっと唇を突き出している母さんが背後に立っていたのだ。
「ふふっ、冗談よ」
「じょ、冗談ね」
ちょっぴり残念。
などと小さく溜息をついていると。
チュッ
「あっ・・・」
「行ってらっしゃい」
閉まるドアの向こうに消えていくちょっぴり赤くなった母さんの顔。
そして頬に今まで味わったことのない感触。
事実を把握すると急にカァーッと熱くなってきて、僕はたまらず走り出していた。
走ることで誤魔化しておかなければ、アスカ達に何故赤くなっているのか、って問い質されるに決まっていた。
「シンジ〜、お前もやるなぁ」
教室に入った瞬間、ヘッドロックを極められた僕。
それを極めているのはいっつも出番が少ないケンスケ。←ほっとけ!!
チラッと見えた嫌らしい笑顔に僕は寒気を覚えた。
「俺はてっきり惣流、赤木、綾波の三人の内の誰かだと思ってたのになぁ」
「なんの話をしてるんだよケンスケ」
「ふっふっふっ、この相田ケンスケを舐めるなよ!」
指差した先を見ると、黒板にでかでかと”碇シンジ・年上の恋人発覚!?”と書かれ、下に引き伸ばした写真が張ってあった。
・・・昨日の写真だ。
僕と母さんが手を繋いで街を歩いている写真。
そして丘の上で腕を絡めている写真。
ただ残念なのは母さんの顔がよく写っていないことだろうか。
でも欲しいな・・・じゃなくて!!
「こ、これは違うんだよ!!」
「何が違うんだシンジ?俺は見たぞ、そしてこの写真が何よりの証拠だ!」
力説しているケンスケはなかなか止まりそうにない。
「どうしたのこの騒ぎは?」
「・・・変態眼鏡君絡みのようだわ」
「フンッ、じゃどうせ三流週刊誌ネタ程度のもんでしょ」
振り返らずともそこに現れようとしているのが誰か容易に想像がついた。
そしてこれから僕が追求されるであろう事も。
「「「なにこれ・・・?」」」
三人が見事に同じ科白を呟いて固まっている。
その背から立ち上るオーラが周囲のクラスメートを退けさせ、僕への花道を作り上げた。
「これは・・・どういう事かしら」
「碇君・・・昨日は学校を休んでいたのはこういうことなの?」
「シンジぃぃぃぃ、キリキリ話してもらうわよっ!」
「み、みんな落ち着いてよ。こ、これは・・・」
「「「これは?」」」
「これは・・・母さんなんだっ!!!!!!!」
瞬間、クラスの中で何かが崩れる音がした。
みんなひきつった笑顔で僕を見ている。
なんだっていうんだ?
「ね、ねぇ・・・シンジ、幼なじみとして一つ確認したいことがあるわ」
妙に改まってユイナが問い掛けてきた。
「シンジって・・・マザコンなの?」
「・・・・・・・・・・・・へ?」
一瞬何を言っているのかわからなかった。
だんだんとマザコンという言葉が染み込んできて、意味を理解していった。
マザコン。
どうなんだろう。
たしかに母さんを見ているとドキドキする。
でも僕は・・・・・・・・・・・・
そうか・・・今やっと気付いた。
僕は母さんを母さんと思っていなかったんだ。
今の僕が母さんのことを親としてみるためにはあまりに思い出が無さ過ぎた。
父さんが写真とか捨ててしまい、ほとんど話してくれなかったから僕はキョウコおばさんの思い出話からその姿を想像するしかなかった。
それでもそれは小学生低学年頃の話で、中学生になった頃には周りに興味が無くなってきていたせいか母さんのこともほとんど忘れていた。
だから・・・
だから母さんと向き合ったときになにか変だったのだ。
まるで・・・赤の他人と向き合っているようで。
「ひ、否定してくれないの?」
「・・・僕は、マザコンでも構わない!!母さんの・・・母さんのことがっ!!」
更に何かが崩れ落ちたようだ。
でもそんなことは僕には関係ないことだろう。
そうだよ僕は母さんのことが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まてよ、そうなるとあの父さんが邪魔だな。(ニヤリ)
母さん・・・僕が解放してあげるよ、あの髭の呪縛からッ!!
マザコンを否定しなかったばかりか、薄笑いを浮かべ始めるシンジに、三人の少女は一歩ひきながらもこれからの行動を考え始めていた。
「シンジが壊れちゃった・・・」
「ユイナ、レイ!こうなったら同盟よ!おばさまにシンジを近づけさせちゃダメだわ!!」
「任務・・・了解」
「・・・わかったわ、全力で止める」
顔を見合わせ、大きく頷く。
ここに「碇少年を更生させる会」が発足したのだった。
もちろん続きません♪
バル :また出番がない・・・
アスカ:あんたバカァ?こんなみょうなものに出演したってろくな事にならないわよ
ユイナ:そうよ。アタシやレイなんかレ○扱いだったんだから
アスカ:あのときはたまらなかったわよ。二人して襲ってきて
シンジ:母さん・・・美人だもんなぁ・・・
アスカ:・・・やっぱりマザコンだったんだ、シンジって・・・
ユイナ:そういえばアタシの名前もユイさんからとっていたわけだし・・・
シンジ:はっ!?ち、違うんだよ!これは違うんだ!
ユイナ:問答無用だわ。シンジ、アタシは実家に帰らせてもらいますからね
アスカ:あたしも。
シンジ:あぁ〜待ってよ二人とも!
ユイナ:ふ〜んだ!あんたなんかママのおっぱいしゃぶってればいいんだわ
アスカ:じゃぁね、甘えん坊のシンちゃん
バル :・・・アスカはわかるが、ユイナの実家ってどこだ?
レイ :また出番・・・少ない・・・