学校生活は大きな変化を見せ始めていた。
疎開者が出ているのは以前からなのだが、その傾向が戦自との一件以来更に強くなってきているのである。
授業らしい授業も減り、日に日に教室の中が殺風景になっていくのを、戦っているチルドレンは複雑な思いで見ていた。
この街にいれば危険は常に付きまとうことになるのは確かで、他の街へ移れば最低でも戦闘に巻き込まれるということはなくなるだろう。
友人達には無事でいてほしい。
だがその友人の顔を見ていたい。
危険な場所とわかっていながら、その場所にいてもらいたいというなんとも矛盾した考えを持っていたのだ。
WING OF FORTUNE
第参拾六話 選択
「なんかまた減ったわね」
教室を見回すと、空席が増えた事に一抹の寂しさを覚えた。
このままで行けば二つ三つのクラスが統合されるのが先か、強制疎開が先か、といったところであろう。
どちらにしてもそう遠い未来のことではないと、誰もが確信していながら、口にはしていなかった。
「仕方ないわよ、あれだけ事件が立て続けに起こってたら・・・」
「・・・ヒカリも疎開する予定あるの?」
「わからないわ。お父さんの仕事の関係もあるし」
そう言うヒカリの表情になんとなく“嘘”を感じ、アスカはそっと微笑む。
「疎開するって話が出たらすぐにこの街を離れてね。あたし、ヒカリには無事でいてほしいから」
「・・・アスカ?」
「もしかしたら街が無くなっちゃうかもしれない。だから、その時はここから離れていてほしいの」
アスカの頭の中には、NN兵器によって天蓋に穴を開けられたジオフロントの様子が浮かび上がっていた。
上層都市がどうなったかなど見てはいないが、だいたいの予想はつく。
実際、世界というあまりに漠然とした目標よりも、自分の友人や取り巻く環境を守りたいと思う方が具体的だ。
「街が無くなっちゃうだなんて、そんな縁起でもないこと言わないでよ。みんな・・・戦いが終わったら戻ってくるわ」
「ん・・・・・・そうね」
(戻ってくるか・・・あいつも戻ってくるのかしら?)
窓際で騒いでいる少年らに目を向けながら、ぼんやりと思う。
(でも、あのとき拒絶したのはあたしなのよね・・・)
自分のことしか見えていなかったあのときとは違う。
いまいち自分の抱いている気持ちがなんなのか判然としない今、彼と会って話をしてみたいと思っていた。
もしかしたら似たもの同士だったのかもしれない少年と・・・
以前の事を謝罪するにしろ、させるにしろ、全てはそれからだ。
「アスカ・・・なにかあるの?」
覗き込んできたヒカリにハッとなり、両手を振って誤魔化した。
しばらく訝しげにしていたのだが、そこはやはり親友を自負するだけあって踏み込んでいいところ、そうでないところというのをしっかりわきまえていた。
何時か話してくれるだろうというヒカリと、何時か話せるときが来ると良いなと思うアスカ。
どちらともなく微笑みを浮かべ、やがて二人の間にはいつもの親しげな雰囲気が戻ってくるのだった。
「どないしたんや、シンジ?」
だが、穏やかなときはそれほど長くは続かなかった。
窓際が急に静かになり目を向けると、不審そうに眉をひそめている二人に挟まれ、シンジが神妙な顔で、そう・・・エヴァに乗っているときのような顔で、遙か彼方の空を見据えていた。
アスカはそれを見てすぐ、自分とは別にレイやマナと話しているはずの少女を見やった。
そこには予想通り、同じ様な顔で遠くを見つめているユイナがいた。
「・・・落ちてきてる」
シンジの呟きに対して誰かが問い返す間もなく、地面が僅かだが確かに揺らいだ。
地震と勘違いした生徒らは騒ぎ出したが、その原因を大方予想できた知っているチルドレンは、既にスイッチを切り替えにかかっていた。
「なるほど・・・あの目玉オバケが来たってわけね」
「目玉オバケ?」
「ううん、こっちの話。・・・ともかく、あたし達は行かなきゃ」
席を立ち、目配せをすると皆が申し合わせたように頷く。
それは携帯電話の呼び出し音が鳴り、招集がかけられるよりも先のことだ。
アスカとレイに至っては―――特にはアスカだが―――今回現れた使徒、その撃退方法が既に頭の中に浮かび上がっていた。
それから第三新東京市全域に、市街への避難命令が下されるのにはさほど時間はかからなかった。
「話には聞いていたが・・・また豪快な攻撃方法だな、おい」
遙か上空から落下した物体が海面に着弾したその映像を見て、空笑いを浮かべながらどうにかバルは感想を口にした。
この光景を目の当たりにすると、さすがの彼をしても呆れてしまったらしい。
肉体を武器にするという表現は当てはまるが、明らかにこれとは意味が違う。
「ともかく、シンプルだが威力には申し分無しってとこだな」
「落下のエネルギーと質量、そしてA.Tフィールドを利用してます。使徒そのものが爆弾みたいなものですね」
「・・・なんか事務的で寂しいぞ、マヤ」
「これが仕事なんだから当たり前でしょう。だいたいあなたが軽すぎるのよ」
ジロッと睨み付けるが、バルはその反応を楽しんでいるように思えたため、マヤは溜息をついて作業に戻った。
彼に緊張をほぐそうという意図があるのかどうかは定かでない。
ただ、それが素であるのではないかという見解の方が遙かに多いのも事実だ。
絶望的状況でもこの男はこの調子なんじゃないだろうかと思うと、それが容易く想像できてしまって肩の力が抜けた感じがした。
一つ深呼吸をすると、マヤは報告を続けた。
「・・・初弾は海岸近くに落下、内陸部にはさほどの被害は出ていません」
「でも次からはこの結果を踏まえた上で、確実に誤差を修正してくるでしょうね」
「戦自とUN軍が新型のNN航空爆雷による攻撃を行う用意があるそうです。どうしますか?」
椅子ごと振り返り、ミサト、そして一段高いところにいるユイを見やる。
ユイはリツコとよく似た白衣姿で、見た目は科学者然としていたが、同時に上に立つ者としての威厳・風格といったものを感じさせた。
ゲンドウと冬月は出張中のため、(階級は無いのだが)ユイが実質的な責任を担う司令代行である。
表に立つという意味ではゲンドウよりも似合っていなくもない。
あの髭男は裏方に回っていた方がしっくりいきそうなものだ。
「やらせておけばいいわ。通用しないにしても、時間稼ぎと敵A.Tフィールドの強度を確認する位は役に立つでしょう」
「了解しました」
「それでエヴァはどうなっているの?」
「全機準備は万全、いつでも出撃可能です」
即座にリツコが返答し、ユイはそれに表情を変えずに頷くと、言葉を向ける先をミサトへと変えた。
「作戦は?」
「・・・やはり受け止めるのが妥当かと思いますが・・・」
「その口振りだと、まだ他にも手があると言っているように聞こえるわね」
たっぷりと躊躇いの色を見せてから、ミサトはゆっくり頷いた。
A.Tフィールドを展開して直に受け止めるというのは、記憶に間違いがなければ既に以前成功している方法だ。
しかも今ならば一機多い、四機のエヴァで作戦に臨むことが出来る。
一機のエヴァでカバーする範囲が狭まり、余裕が出来るため追い付ける可能性は三機の時に比べてかなり高くなるはずである。
更には支えることになった場合にも、一機の負担が軽減されるのだから、成功する可能性も同様だ。
そのため、いくら成功率が低い作戦だとしても、敢えて変更する必要性が無いように思われた。
「話してくれる?」
「はい・・・初号機で目標が第三新東京市上空に現れ、地上に落下するよりも先に迎撃する方法です」
「そう、初号機で・・・」
「確かに、それなら街への損害は皆無だな」
やはり言うべきではなかったか。
言い終えてからミサトは、露骨に不快感を露わにしていた。
無論その感情の矛先は自分自分のうちにある、抜けきらない軍人としての意識である。
そして、たった一人の力に頼ることの危険性というものは認識しており、すぐ頼るような体勢が染みついてしまうことは避けたいのも事実。
だがその反面、作戦を立てる側としては、より成功確率が高い方を選ぶのが自然な流れであると言うことも出来た。
「シンジ」
長い沈黙の後、口を開いたのはユイだった。
ミサト等の横に待機していたチルドレンは一様に緊張した面持ちでユイの方を見上げている。
「あなたが決めなさい。受け止めるも良し、迎撃に向かうも良し、あなたが自分で進むべき道を選びなさい」
「・・・・・・ちょっと時間をもらってもいい?」
「ええ、UN軍が攻撃をしている間は余裕があるわ。ただ侵攻してくる時間については、何時とは断言できないから、出来るだけ急いでね。アスカちゃん達は先にエヴァに搭乗していて」
シンジとユイナは発令所から出ていき、他のアスカ達はケイジへと向かうべく、これもまた発令所を後にした。
発令所を離れるとそこはほとんど音もしない、痛いくらいの静寂に満ちていた。
元々ネルフは施設の広さとは裏腹に、人がいる場所は限られている。
今回はその上戦闘時にはいる必要のない下級職員も一般市民と同様に退避させているため、既に本部内は一部を除いてほぼ無人に近い状態だった。
使徒襲来の報からさほど時間が経っていないにも関わらず、これ程までに行動が迅速だったのはミサトらの判断に他ならない。
ちなみにここに残ると言い張ったマナも、無理矢理引きずっていってもらっている。
今頃は街の外へ向かっていることだろう。
そんな人気のない廊下をシンジとユイナはプラグスーツ姿で遠回りをしながらケイジに向かっていた。
「ねぇ、受け止められると思う?」
「・・・さあ、でも体の一部であの威力だから、ここを狙ってくるはずの本体を受け止め損ねたら地上都市だけじゃなくて、ドグマあたりまで根こそぎ持っていかれて・・・まぁ・・・ここらへんの地形が変わるのは確実ね」
サラッと言ってのけたものの、想像すると背筋に冷たいものが流れた。
緊張している証拠として、二人とも表情が硬く、ややぎこちない。
「そんなものをよく受け止めたよね、僕よりも前の碇シンジ達は」
「まぁ一人じゃなかったでしょう。アスカもレイも居たと思うわ」
三体のエヴァが発するA.Tフィールドが、耐えられる荷重の正確な数値はわからない。
元々展開するフィールドの強度には、その時のシンクロ率が大きく関わってくるのである。
今のシンジにはフィールドとは別に防御方法があるのだが、それを受け止めるという方向性を持って使用できるかはいまいち疑問であった。
「・・・でも、失敗したこともあったんだろうね」
「そうね・・・そうかもしれない」
黙り込むと二人の足音だけが響き渡って、まるで他には誰もいないのではないかという錯覚に陥りそうだった。
シンジが一歩ほど前を歩き、ユイナがその後をついていく。
(なんだかな・・・怖くないって言えば嘘になるんだろうけど・・・やっぱり慣れたのかな)
思えば、全くとんでも無いものに慣れてしまったものだ。
自虐的な苦笑が不意に浮かんで、肩を揺らした。
「落ち着いてるわね」
「自分でも不思議なくらいだよ。まだ僕の中には、力に対する過信が残っているのかもしれない」
「アタシはさっきから足が震えちゃって・・・ダメね。気持ちの方は大丈夫だって思ってるのに、体が怯えちゃってるの」
立ち止まったユイナに合わせ足を止めると、シンジは体を少しひねってその姿を視界に入れた。
「でも大丈夫。みんながいるもの」
途端にパッと華が咲くような笑顔を向けられ、シンジは慌てて前を向き直った。
「あれぇ〜?シンジ君ってばどうしたの〜?」
「ったく、心配して損したよ!」
「アハハっ、ゴメンゴメン。でも怖いのは本当よ」
「どうだか」
「もうっ、怒らないでよ」
とても戦いの舞台へ向かって歩いているとは思えないほど明るい声が、静かな本部内に響いていく。
しばらく歩くと今度はシンジが歩みを止めた。
不意のことだったので、ユイナは一歩後ろを歩いていたのが追い抜いてしまうことになる。
「ユイナ・・・僕はやっぱり・・・・・・って、え?」
俯き気味になっていたシンジの視界に、ぬっと指が表れた。
訝る間もなく鼻っ柱を弾かれて、シンジは鼻を押さえて顔を上げた。
涙目になりながらも抗議しようとしたのだが、その行動は途中で止まってしまった。
ユイナは腕を組み、額に血管マークを張り付かせながら仁王立ちしていたのである。
「シンジはアタシのことなんだと思ってるの?これまであなたがこの世界で何を考え、何をしてきたか、一番近くで見ていたのはこのアタシなのよ?今この状況でどんな選択をするのかぐらい、簡単に想像できるわ」
誰かさんと同じく人差し指を突き付け、瞳を見据えたまま言い切ったユイナの言葉には、一寸の澱みも無く、迷いも無かった。
が、口にしたあと恥ずかしくなったのか、手を引っ込めると背を向けて歩き出してしまう。
改めてその背中を見ると、自分とさほど身長差はないはずなのだが、何故だか小さく思え、(なんだかんだ言ってもやっぱり女の子なんだよなぁ)とシンジはやや場違いな感慨を抱いた。
が、和んでいたシンジは不意に同時に口の中が苦くなるのを感じ、鼻を押さえていた手で顔を覆った。
(ハァ・・・情けない・・・)
そう言ってもらいたかっただけなのではないのか?
背中を押してもらいたかっただけなのではないのか?
そう問い掛けると、自分に対する疑念が生じ、一種の自己嫌悪に陥った。
(力がどうとかいう問題じゃないよなぁ・・・これって)
「自分の道は自分で選ぶ・・・そうだよな」
胸に溜まったものを吐き出すように深く息をつくと、思い切り両手で自分の頬を張る。
その音に驚いたユイナが振り返ってみると、頬を真っ赤にしながら瞳に決意をたたえていた。
「プッ・・・アハハハハッ、おっかしな顔!!」
「えぇーっ!?それはないんじゃないの?人が真面目に考えていたっていうのに・・・」
「だってぇ〜、そんな顔してたら、全然シリアスにならないわよ」
ユイナが腹を抱え、大笑いをするのも無理はない。
クッキリと手形が突いている顔でシリアスしようというのが土台無茶なのだ。
しかも両の頬。
多分ここにいるのがアスカでも同じように笑ったのではないだろうか。
「ちぇっ・・・まぁいいさ。行こう、ユイナ。・・・・・・僕は・・・やるよ」
「ん、どちらを選ぶにしろ、迷いを抱いたまま作戦に臨むよりもずっと良いわ。あとはあなたの心次第。それに、もうあの力はあなたのものなんだから」
(僕のものか・・・)
ユイナの言葉のただ一部を噛みしめ、刹那の間だけだったがその表情と瞳の光の色を変えた。
だがそれが完全に表へと浮き上がるよりも前に、シンジは頷き、それを咀嚼する。
「あのさ・・・これが終わったら、何か奢るよ」
「いきなりどうしたの?」
「まぁ・・・その、僕からの感謝の形って言うか・・・」
「ん〜、それだったらみんなで一緒に何か食べに行きましょうよ。ご苦労様って、ね?」
無邪気に言うユイナにシンジは苦笑しながらも同意する。
「そうだね、そうしよう。・・・料理をする手間も省けるし」
「アハハッ、ならさっさと行きましょうか」
「・・・ミサト、気付いているかしら?」
顔をモニターに向けたまま、リツコが問い掛ける。
発令所は使徒の情報を収集するためにフル稼働状態にあり、シンジらがいた通路とは正反対に喧騒に満ちていた。
だから酷く小さく、囁く程度だったその声は、恐らく隣にいるミサトにしか聞こえていなかっただろう。
「ええ・・・どちらにしても、これまでと同じようにいかないかもしれないわね」
モニターを睨む二人の胸には、どっかりと同じ不安という名の塊が陣取っていた。
明らかに以前よりも攻撃の“精度が上がっている”のだ。
記憶違いがなければだが、これまで三度の試射を行い、その都度誤差修正をしていたはずだ。
それが今回はどうだろう?
一度目で既に海岸線近くへの攻撃を成功させている。
「第二射着弾!!内陸部に多数の被害が出た模様です!」
使徒が放った第二射が作り出した巨大なすり鉢状の地形が、正面モニターに大写しにされる。
いよいよ現実味を帯びてきた事に、ミサトは隠すことを忘れて大きく舌打ちをした。
リツコも次々と報告される被害に顔を苦々しく歪めている。
これは暗に以前よりも初期段階における精度が高くなっていることや、学習能力が更に向上している事を示唆していると見ることも出来るわけだ。
以前という違うだけで、不安を煽る材料としては十分すぎた。
口にすれば自分たちの不安を伝染させかねないので黙ってはいたが、正直なところ誰かに言ってほしかった。
たった一言で良いから。
「やれやれ、何考えているかは知らないが・・・大丈夫だ、どんな作戦だって俺達は絶対に成功させる。くだらないことで悩む暇があったら、お前達は子供らの無事でも祈ってやってくれよ」
そう良い残してバルはその場から消え、二人はしばし軽い驚きに見舞われていた。
目を瞬かせて、些か間の抜けた顔を向き合わせる。
しばらくそうしていると急におかしさがこみ上げてきて、控えめに笑みをこぼした。
「フフフッ・・・・・・彼はもしかしたら、私たちの精神安定剤でもあるのかもね」
「案外そうかもしれない・・・まったく、よく気が付くわねぇ」
言外で感謝し、二人は良い意味での緊張を取り戻した。
その後、使徒は周囲にある衛星をことごとく破壊し、姿をくらますこととなる。
「まったく、改めて考えてみても、ミサトって無茶な作戦たてるわよね」
「たしかに・・・わしは初めて聞いたけど、ホンマ呆れたわ」
第三新東京市の各所にはクラウチングスタートの体勢で待機しているエヴァの姿があった。
ぼやいているのは先程説明を受けた“手で受け止める”という作戦の内容についてだ。
シンジが迎撃という形を採るにしても、失敗した場合にはやはり手で受け止めなければならない。
そのための説明(といっても結局落下地点へ向かって走り、手で受け止めろというだけの話だ)を受けたのである。
「本部まで根こそぎか・・・今回は何か切実なのよね」
「失敗するわけにはいかないわ」
「そりゃそうやろ。学校まで消えてまうからな」
「・・・俺としては、このまま全員が疎開してくれた方が嬉しいんだが・・・」
バルの言葉に三人は押し黙った。
同じ様なことは考えていた。
だが・・・バルは少しばかり三人とは観点が違っていたのである。
とてもではないが、子供らの前で言えたような内容ではない。
そしてその彼が口にしなかった想いを、誰かが察しているとは思えなかった。
「疎開かぁ、やっぱりその方がいいのよね」
「しばらく会われへんようなるけど、しゃあないわ」
「あんたの場合、ヒカリと会えないのが残念なんじゃないの?」
「な、なに言うとるンや!わ、わしはただ・・・」
「二人とも・・・碇君達が来たわ」
会話にレイが割り込んだ直後、各エントリープラグの中に初号機のプラグ内の映像が映った。
不完全燃焼ではあったが、二人とも渋々手を引く。
「みんな、お待たせ」
そういったシンジの頬はどうにか元に戻っていた。
まだうっすらと赤みがさしているように見えたかもしれないが、映像を通して見る分には気付くことはないだろう。
「それで、答えは出たのかしら?」
「うん、僕はやるよ。成功確率が上がるなら・・・ううん、僕自身がそうしたいからだね」
「でも、もしもの時は、みんな頼むわね」
今更何を、といった風に三人は頷く。
これにシンジとユイナは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「あ、そうそう、終わったらシンジが奢ってくれるってさ」
思いだしたかのように言うと、アスカとレイは少しだけ意外だというような顔をして見せた。
「へぇ〜、でもそれって今までミサトの科白だったんだけど」
「そうなの?」
「・・・でもステーキは嫌」
発令所で子供らのやり取りを聞いていたミサトは、頬がひきつり、何とも言えない顔つきになっていた。
言うべき科白を先取りされたばかりか、否定されてしまったのである。
もっとも、そう切り替えされるのは大方予想できたであろうに、別の科白を考えていなかった彼女がいけないのだが。
「フッ・・・無様ね」
「・・・あんたのその科白聞くのも久しぶりだわ・・・」
後書きみたいなもの。
というわけで、使徒戦。
いま現在予定している話数を考えると「WING」は中盤は越えているんですよねぇ・・・既に終盤と言っていいかも。
けどまだ伏線を張ろうとしています。
頭の中にあるものそのままだと、最後の方は展開が今よりテンポアップする可能性大。
う〜〜ん、まぁいいや・・・頑張ろう。
感想等お待ちしてますんでこちらか掲示板にお願いします。
誤字脱字の指摘もあればお願いいたします。