「ねぇ・・・何時までこうしていたらいいわけ?」

「何時までって、分かり切っているでしょう?使徒が来るまでよ」

「・・・取り敢えず聞いてみたかっただけよ」

 

四機のエヴァがそれぞれの配置について待機状態に入ってから、既に数時間。

アスカと違い、他のチルドレンも口には出さずとも、態度でこの状況の退屈さをアピールしているほどだ。

特にトウジなどは馬鹿でかく口を開けてあくびなどしており、発令所では所々から失笑が漏れていた。

 

「こんな状態で大丈夫なのかなぁ?」

「まぁ、緊張しすぎていざって時にお疲れモードになっちゃうよりは良いんじゃないの」

「もしかしてこれも使徒の作戦とか。宮本武蔵みたいに」

「アハハッ、それそうかも。・・・・・・けど、本当に焦らして集中力を失わせようとしていたとしたら、結構思考能力があるって事になるわね」

 

言葉の後半からは至極真剣に、それぞれのエントリープラグ内を映しているウィンドウを見やる。

皆それに気付くと、一様に小さく笑みを作って「大丈夫だ」と言わんばかりに頷いて見せた。

どうやらだらけきっているというわけでもないらしい。

それが適度の緊張と言えるかどうかは定かではないが。

 

「それは別としても冗談抜きで、気をつけないと。まだ大きくなった力を最初から解放して戦うのは初めてだから」

「そうなのよね。一撃で決められれば、いいんだけど」

「決めてみせるさ」

「その意気や良し。でも気合いが空回りって事にはならないようにね」

 

背後から頭を撫でられ、シンジは少し照れが入った不満顔である。

しばらく、ユイナはシンジの髪の毛を指先で弄っていたが、シンジ本人は諦めているのか、振り払うことはしなかった。

 

「シンジの髪の毛って綺麗ね。伸ばしたらサラサラになりそう」

「そうかなぁ・・・?でもそうすると女っぽいって言われそうだよ。ただでさえ、母さんに似て女顔だって言われることがあるのに」

「あら、だったらお父さんに似て生まれたかった?」

「う゛・・・そ、それは・・・・」

 

自分の親ながら、シンジはあれと似てなくて良かったと思ったことがある。

その思いが思い切り顔に出ていたらしく、ユイナはクスクスとおかしそうに笑みをこぼした。

シンジは肩を竦めて溜息をついたが、その顔もやはり仕方なさそうにだが、笑みが浮かべられていた。

 

 

「・・・和んでるわねぇ・・・・・・特にあの二人」

 

リツコが振る舞い始めたコーヒーをすすりながら、ミサトもぼやいていた。

初号機だけが複座式のエントリープラグを採用し、閉鎖空間に二人が存在しているのだから、当然と言えば当然だ。

誰でも近くに人が居た方が、精神的にも安定するし、会話も弾む。

何より直接触れ合ったりすることが出来るのである。

(まぁ・・・あの二人は普通の繋がりではないものね・・・)

詳しくユイナという存在の成り立ちを聞き及んでいるリツコは、じゃれあっている二人を横目で見、少しだけ不機嫌そうにしてるアスカとレイに視線を移して口元を緩めていた。

 

そして更に数時間、ようやくそれは第三新東京市上空に姿を現した。

 

 

 

 

 

 

WING OF FORTUNE

第参拾七話 飛来するモノ

 

 

 

 

 

 

「おいでなすったわね。エヴァ全機スタート!!マギによる落下予想地点はエリアB−2!!」

 

ミサトの声をきっかけにアンビリカルケーブルをパージし、駆け出す三機のエヴァ。

初号機は翼を展開して空へと浮かぶ。

この様にして作戦を開始し、緊張が漲ったネルフだったが、ある事実を前に何とも言えない沈黙に包まれた。

 

「あ、あの・・・使徒が落下してきませんけど・・・」

 

青葉が戸惑いを大いに含んだ調子で報告したとおり、使徒が現れたはいいのだが、そこから全く動こうとはしなかったのである。

出現した位置から落下するエリアはだいたい特定できたが、落下してこなくては作戦そのものが始まらない。

ミサトもスタートと言ってしまった手前、振り上げた拳の行き先を失ってしまったようなばつの悪さを感じていた。

 

「ええっと・・・どういうこと?」

「私に言われてもわからないわよ」

「そ、そうよね・・・」

 

ミサト、そしてリツコ。

既に落ちてくるものという前提の元での作戦であり、何より二人には現れた直後に落ちてくるという先入観があったため、困惑は誰よりも大きかった。

同じような理由でアスカとレイもエヴァを走らせるのを止め、ポカンと空を見上げている。

 

「ミサト、こういう場合どうすればいいの?」

「取り敢えず二人は電源を繋ぎ直して。落ちてくる前に電源切れになったら話にならないから」

「「了解」」

 

青と赤のエヴァは落下予想ポイントに近い電源ビルへと向かう。

 

「でもミサト、どうするの?現状では超高々度への攻撃はほとんど不可能よ」

「わかってるわ。最悪の場合、ロンギヌスの槍を使用する」

「ロンギヌスの槍・・・許可云々は抜きにしても、まだあの精神攻撃をしてくる使徒が残っているのよ?」

「ここで負けたら、そいつを相手にすることもなくなってしまうわよ。背に腹は代えられないってね」

 

どうやら柔軟な思考能力を取り戻してきたらしいミサトは、軽くリツコにウィンクをして見せる。

リツコはその切り替えの速さに呆れとも、感心ともとれない溜息をつき、自身もフッと科学者としての冷笑を浮かべた。

 

「ということなんですが、ユイさん、使用許可は降りますか?」

「・・・そのときは事後承諾ということにしておきましょう。使ってしまっても、文句を言われたときは聞き流してしまえばいいわ」

 

ユイもまたミサトと似たような顔で、いまいち冗談のように聞こえないでもない事を言う。

いや、多分本気だろう。

目が笑っていない。

 

「ありがとうございます。・・・・・・使徒の方はどう?」

「今のところはまだ」

 

使徒は相変わらず成層圏あたりに浮かんだまま、その巨大な瞳(?)で第三新東京市を見下ろしていた。

まるで全てを瞳の中に焼き付けるように。

そしてその直下では、3号機が落下予想地点の中心に陣取り、空を見上げていた。

 

「全く予想外の展開だな。落下してこなければ話にならん」

「そうやなぁ・・・せやけど、落ちてくる場所が限定できとるんやから、かなり楽になったんとちゃうか?」

「だといいんだがな」

 

ポツンと、青空の中に光の粒のようなものが見える。

(初号機か・・・さすがに3号機の翼じゃあ、あの高さは辛いよな・・・)

初号機の翼はあくまで翼の形をしているというだけであって、実際に羽ばたいて飛んでいるわけではない。

よって、初号機は飛んでいるというよりも、浮かんでいるという表現が正しいのかもしれない。

 

「えらい高いとこまでいっとるわな、あの二人」

「ああ、そうだな。ところでアスカ、レイ、電源は繋げたか?」

「心配しなくてもこっちはオッケーよ」

「零号機も大丈夫。接続は完了したわ」

 

再接続をし終えた二機のエヴァが、それぞれの電源ビルの近くで先程と同じように膝をついていた。

落下予想地点の算出は終わっていても、三機が同じ場所に存在していると、もしもということがある。

アスカとレイは、その予想範囲の縁の当たりに待機し、それに対応できるようにしていた。

 

「それにしても落ちてこないだなんて、何考えているのかしらね?」

「さてな。俺達が出来るのは受け止めることだけだ」

「・・・もし、こちらの作戦に気付いているとしたら・・・」

「気付いとる・・・?確かに気付いとったら、別の方法を考えるもんやけど・・・」

 

(気付いている?)

レイがポツリと漏らした言葉に、バルは何やら嫌な予感を覚えた。

そして自分だったらどうするかという、視点を変えた考えを始めるとその予感は急速にハッキリとした輪郭を持ち始めた。

(待てよ・・・本当にこちらの作戦を気付いたとしたらどうだ)

(いや・・・だったら何故、試射をして誤差の修正なんて真似を)

(あそこから出来ることといったら・・・)

 

「なんやバル、急に黙り込んでしもて」

「少し考え事だ・・・・・・」

「あれ?何か光の数が増えてない?」

 

アスカがそう言った瞬間、バルの中で現実と思考が繋がった。

 


 

使徒と街の間に浮かんでいる初号機の中でも、ミサト達と同じように二人が首を傾げていた。

ちょうど雲の上に位置するぐらいの高度だ。

遮るものは無いがそれでも肉眼で使徒の姿を確認できるはずもなく、ただ感覚でこの先にいるという事を感じていた。

 

「どうしたものかしらね」

「さすがにこれ以上高く飛ぶのは辛いし・・・」

「待つしかない、か」

 

姿を現しながら、一校に落ちてくる様子がないことから、何か別のことを仕掛けて来るであろうという予感はあった。

しかしそれが何とはすぐには思い当たらず、皆が皆頭を悩ませた。

どれくらいそうしただろうか?

たぶん実際の時間にしてみれば数分にも満たなかったに違いない。

 

それがシンジとユイナの感覚の網に掛かるのと、発令所のモニターで確認されたのはほぼ同時だった。

 

「なんだ・・・?落ちてくるけど・・・これって・・・」

「もしかするともしかして・・・」

 

初号機の脇を幾筋かの流星が駆け抜けていく。

大きさにしてわずか数mのオレンジ色の光に包まれたそれは、重力によって大地へを穿つ、凶悪な牙へと変貌していた。

シンジとユイナはハッとなってその光の行く先を振り返りながら叫んでいた。

 

「爆撃ッ!!」

「これが狙いだったのか・・・っ!」

 

振り返った二人の視界には、何かが勢いよく弾けたような、そんな光景が映った。

光が止み、爆風もおさまったそこには、小規模ながら作戦開始前に見た映像と同じ、すり鉢状の地形が出来上がっていた。

そこにあったものは最早形を留めてはいない。

 

「みんなは!?」

 

衝突の際にまき上がった粉塵がおさまりかけると、その向こうに光の壁が見え、少なからず安堵した。

しかし安堵したのも束の間、次がもうすぐそこまで迫っていた。

 

「シンジ、まだ来る!」

「クソッ、これ以上街に落としてたまるかっ!!」

 

再び上空から迫る光を纏った塊に向け、振り向きざまに羽根を打ち出す。

光と光が衝突し、その度に空中でその光が弾け飛ぶ。

 

「クッ・・・被害状況は!?エヴァは無事!?」

「全機、フィールド健在。機能低下は認められません」

「兵装ビル、稼働率低下。電源ビルも幾つか稼働不能状態に陥っています」

 

この後も報告は続き、エヴァは自己のA.Tフィールドによってほぼ防御しきれたようだが、街はかなり悲惨な状態にあることを思い知らされた。

ミサトも思わず爪を噛み、苛立ちと苦々しさを露わにしている。

 

「まさかあの位置からの爆撃とはね・・・やってくれるわ」

 


 

「「ハァ・・・ハァ・・・」」

 

荒い呼吸が重なる。

次々と飛来してくる使徒の一部を全て打ち消している初号機・・・シンジとユイナ。

戦いが始まってまだ数分ほどでしかないのだが、その疲労の度合いはかなり色濃く表れていた。

まるで長距離を走った後のように、肩で息をするほど息が上がっていた。

(思っていた以上に消耗が激しい・・・これじゃあ、あと何分ももたないわ)

ユイナから見えるのは自分と同じく大きく肩を揺らしているシンジの背中。

主に力を発しているのがシンジなのだから、彼の方が消耗が激しいはずであることは明白である。

それも元々そういった力を使うような存在ではないといったことが、更に精神的な疲労の蓄積を早めている感じがあった。

 

成層圏、もしくは成層圏外だが、そこまで飛んでいくことはおそらく無理ではなかった。

このままでは消耗する一方だと、二人とも自分のことなのだから口にしなくともわかっている。

出現した直後であれば無理をして、A.Tフィールドを貫き、コアを砕くことの出来る距離まで近づけたかもしれないが、今は迎撃するのに精一杯になってしまいそれどころではなかった。

迎撃するという選択が、前にも後ろに動くことが出来ない状況に陥ってしまう原因となったのである。

 

一つ大きな塊を光の束で薙ぎ払い、更に次の獲物を狙うかのように、初号機は移動、攻撃を繰り返す。

下から見ているとそれは、美しい光景であった。

青い空に咲き乱れる光の華。

その一つ一つが、大地を穿つ強力無比な力の塊だということを忘れてしまいそうだったが、当事者にとっては精神を削っているまさにその証だった。

 

「ハァ・・・まったく・・・キリがないわね・・・」

「・・・・・・・・・」

「シンジ?」

 

返事がないことを訝ったユイナが前方のシートを覗き込もうとすると、ガクンと初号機の動きが鈍くなる。

 

「翼が・・・消える!?」

「う・・・うぅ・・・・・・」

 

驚いて見れば、シンジは苦悶の表情を浮かべたまま、頭を抱えていた

力を解放して戦うのが初めてである以上、限界かということなどシンジが把握しているとは思えない。

そして当然ユイナも。

だがその様子から限界が訪れたのだとしか思えない状態だった。

 

「ダメッ!まだ消えないで!!」

「ユイナ、前ッ!」

「え・・・」

 

リツコの悲鳴のような叫び声に前を向くと、目前に迫った塊がすぐ目に入る。

ユイナはすぐさまレバーを握り、身構えた。

 

「フィードバック及び操縦権を全てエントリーUへ移行!フィールド全開ッ!!!」

 

物体の大きさはエヴァよりも一回り小さかったが、これまで落下してきた物の中ではおそらく最大だ。

ユイナがシンクロした初号機はA.Tフィールドを展開し、それを受け止めた。

しかし、翼というその場に踏み止まるための力がその背から消えかかっているため、当然初号機は勢いに負けて落下しだした。

 

「グゥゥゥッ・・・!まだよ、まだ消えちゃダメ!」

 

フィールド同士がぶつかり合い、突っ張っている両腕がぶれる。

万全の状態であれば何でもないかもしれないが、ユイナ自身もかなり消耗している上に、翼の維持とフィールド展開という二つの作業を同時に行っているのだ。

消えないようにするというだけで精一杯だった。

 

「シンジ、ユイナッ!!」

「私たちのことはいいから、みんなは使・・・・・・・・・・・・・・」

 

通信は突然途絶え、ノイズだけしか聞こえなくなる。

 

「初号機、芦ノ湖へ落下!」

「パイロットの両名共に生死不明です!!」

 

衝撃のためか、初号機との通信関係は完全に使用不能となってしまい、映像さえも映らない。

その使徒の一部と共に初号機が落下した芦ノ湖には、巨大な水柱が立ち、更には湖岸が変形していた。

しかし、呆然となっている暇はなかった。

 

「使徒本体、落下を開始しました!落下地点、変わらずエリアB−2です!」

「アスカ、レイ!」

「言われなくても!!」

「走っています・・・!」

 

アスカとレイは指示を出されるよりも早く、落下地点に向けて走り出している。

初号機の落下する様は見たが、ユイナが残した言葉通りに、自分たちは使徒を受け止めるという役目に徹しようとしていた。

出来ることならば今すぐに、引き上げに行きたい。

だが、使徒を受け止めきれなかったら、それさえもできないのだと自分に言い聞かせて走っていた。

そして何よりも、あの二人がそう簡単にやられるはずがないと信じて。

 

「トウジ・・・来るぜ」

「おう、気合い入れていくで」

 

「「A.Tフィールド全開!!」」

 

使徒が落下してくる数秒前、3号機は両手を広げて待ち構える。

 

ズンッ

 

エヴァの体を遙かに上回る巨体を受け止めてからわずか数秒、エヴァ特有の細すぎる四肢がその荷重に悲鳴を上げた。

装甲という名の拘束具が破損し、その部位から(バルにとって)血液が噴き出す。

痛みは確実に搭乗者であるトウジにも伝わり、表情は苦痛に歪んだ。

 

「ぐぁ・・・結構・・・キツイぞ・・・」

「そ、惣流、綾波早う・・・」

「泣き言言うんじゃないわよ!!あんた達男でしょうが!!」

 

まだ後少し、残りのエヴァが辿り着くには時間がある。

最初の爆撃で電源ビルが破壊されたため、どうしても落下予想エリアから離れた場所のビルで電力を確保せねばならず、結果として3号機のみで受け止める時間がかなり長くなるという事態が起きてしまっていた。

腕から血が流れ、肘、膝の関節がギリギリと嫌な音をたてているのが耳に響いてきている気さえもした。

 

そして遂に膝をつく3号機。

使徒を支えている腕よりも、全ての負担がかかっている足の方が損傷が激しいくらいだ。

いくら再生能力が他のエヴァに比べて高い3号機でも、再生能力を負担による損傷が上回る状況では焼け石に水という状態だった。

 

「まったく、情けないわよ」

 

崩れ落ちる寸前、赤が使徒と大地の間に割り込んだ。

 

「あほう・・・まだまだこれからがいいところやったんやで」

「青い顔していたら説得力無いわね。どうでもいいけど無駄話をしている暇はないのよ」

「どうしてや?」

「あんた達と違って、電源切れってものがあるのよ・・・って、レイはどうしたの?」

 

アスカは3号機をフォローしながら使徒を持ち上げていく。

少々腕や足に痛みはあるが、一体で支えていると気を思えば耐えられないほどでもない。

だが支えているだけで精一杯だというのも事実だ。

 

「ごめんなさい・・・」

 

声を出したレイの乗る零号機は、使徒の攻撃によって足止めを喰らっていた。

どうにか使徒の下には潜り込んだのだが、そこで零号機を待っていたのは使徒の一部を切断、弾き出したといういわば弾丸の雨だった。

切り離すという重力に任せた先程の爆撃よりは威力敵に劣るが、無視できるレベルの代物でもなかった。

このとき、珍しくレイの表情に悔しさという感情がありありと見て取れた。

 

「レイは一旦そこから離れて、フィールドでカバーしている方に回って!」

「了解。みんな・・・待ってて」

 

三郷の指示に素早く反応してバックステップを踏み、やや遠回りに弐号機・3号機によって支えられている側に向かう。

その間にも内部電源の終了が刻一刻と近付いている。

 

「レイはギリギリってところか・・・時間がないわ!アスカ、トウジ君、二人でどうにか出来ない!?」

「やってやろうじゃないの。鈴原ッ、あんた気合い入れなさいよね!」

「言われんでもやったる」

「俺ととトウジでもう一度支える。アスカは中和だけに集中して攻撃しろ」

「わかったけど・・・頼むから潰れないでよ。心中はイヤだからね」

 

アスカの言葉にニヤリと笑うと、再度3号機が両手を広げ、全力で使徒を支えた。

この様な気合い、根性などといった精神論はトウジの守備範囲である。

弐号機もその気合いに答えるように、コアと自分を隔てている部分に向けて自分のフィールドを集中展開した。

そうして穴を開け、ナイフを取り出そうとしたとき、3号機の右腕から何か鈍い音が響き、だらんと力を失って垂れた。

使徒が迫り、慌てて弐号機も支えに入る。

 

「鈴原ッ!バルッ!」

「クッ・・・情けない。さっきのでかなりガタがきてやがったな」

「・・・今度はあたしが支える。あんた達がトドメを刺して」

「止めろ・・・わしらはまだ普通やないからええ。せやけど惣流、おまえは・・・」

「バカ言わないで。ここでミスしたらそれこそ元も子もないんだから。それに言ったでしょ、心中はイヤだって」

「・・・スマン」

 

今度は弐号機がメインとなって支えると瞬間、アスカの全身に激痛が走った。

が、それは長くは続かず、痛みはかなり軽減されることとなる。

 

「遅れてごめんなさい・・・」

 

弐号機の隣には同じように両手を広げている零号機。

ウィンドウにレイの顔が映ると、パッとアスカの顔に安堵したような微笑みが浮かんだ。

 

「そんなこと無いわ、レイ。ホント助かったわよ。・・・よぉしっ、三人なら!」

「・・・四人だけどな」

「ゴチャゴチャ言わないの!あんた達はさっさとトドメを刺しなさい!!」

「よっしゃ、任せとき!!」

 

 

 

 

 

 

「・・・心配で来てみたけれど、僕が出る必要はなかったようだね」

 

その光景を見ていた誰かが呟く。

 

 

 

 

 

 

「誰かいる・・・?」

 

どうにか湖から這い出した初号機の中、意識のないユイナを抱えていたシンジは、轟いた爆音と辺りに満ちた光に仲間が勝利したことを知った。

だがその意識は爆発した使徒ではなく、その遙か上空に向けられていた。

 


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後書きのようなもの。

 

ちょっち展開を詰め込みすぎで、慌ただしい感じがしないでもないですが・・・

うむ・・・精進が足りん。

サハクィエルが何をやりたかったかというと、要するに地上の施設を破壊した上で落下しようと思ったわけですね。

が、思った以上に迎撃されてしまった。

これ以上質量を減らすと元も子もなくなるってんで、(初号機を落としたこともあり)仕方なく落下・・・

とまぁ、こんな感じです。

 

最後の誰か・・・バレバレですね。

ここまでに出ていないキャラといったら・・・・・・

 

感想等お待ちしてますんでこちらか掲示板によろしかったらお願いします。

誤字脱字の指摘もあればお願いいたします。

 

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