解説!粗悪な記録型DVDメディアについて

大幅な価格下落が続く記録型DVD用メディア。秋葉原などのショップではDVD-Rメディアが、100円を切る価格で販売されるようになっている。しかし、粗悪なメディアも多く、DVDならではのさまざまなトラブルも発生している

 CD-Rのときもそうだったが、記録型DVDでも、メディアの低価格化は、安価な台湾メーカーによる価格破壊がきっかけになっている。国内で主流のDVD-Rメディアの場合、安価な台湾メーカー製メディアが大量に販売されるようになってから、価格も随分こなれ、最近では、秋葉原の専門店などで100円を切る価格で販売されていることも珍しくない。

 こうしたメディアの低価格化が、その普及に果たす役割は非常に大きい。だが、その一方で、こうした超低価格メディアの品質に疑問を投げかける業界関係者は少なくない。それは、きちんとしたメディアを製造している国内大手メディアメーカーはもちろん、ドライブ製造メーカーにも共通するものだ。

記録できたはずが、読めなくなる

 記録型DVD用メディアで怖いのは、低品質なメディアを使った場合、一見きちんと記録できているように見えながら、実際には“本当に読めないもの”を作成してしまうことがあることだ。

 確かに、CD-Rでも低価格・低品質メディアが問題になったことがあった。しかし、あの時には、書き込みに失敗するとか、読みにくいものを作成してしまうといったトラブルは数多く発生したが、記録したものが「読めない」ケースはそうなかった。読みにくいケースでも、多くの場合では、機器さえ選べば読み出すことが可能だった。

 しかし、記録型DVDでは、状況がこれと異なっている。本当に品質の悪いメディアでは、メディア外周部で「ライトエラー」が発生。途中で記録が強制終了してしまうことがあるほか、「書き込み後になって読めない」ディスクが作成されることがあるからだ。

 また、DVD-Videoを作成した際、映像にブロックノイズが大量発生してしまうことも、品質が悪いメディアではよくある。この場合、特にメディアの外周部で発生することが多い。

 こういったメディアでは、記録終了後にコンペアしてみると「コンペアエラー」が出たり、「DVD CATS」などの業務用検査機を使って測定してみると、訂正不能エラーが発生していたりする。


粗悪なメディアで典型的なケース。外周部で大量のエラーが発生している

 もちろん、こういったケースが数多く見られるのは、極安で売られている台湾メーカー製メディアだ。国内メーカーでも全くないとは言い切れないが、きちんとした品質管理が行なわれているので、そういったことはほぼ存在していない。

 加えて、悩ましいのは、台湾メーカー製メディアではロット差が大きく、同じメーカーの同じ製品でも、問題があったり、なかったりすることだ。だから、ある製品でトラブルがなかったからといって、次に同じものを買っても、今度は問題ありになるケースが少なくない。どのロットがよいかなどユーザーには分からないから、結局は購入してみて問題の有無が初めて分かる。

 この状況を特に嘆いているのが、ドライブメーカーだ。CD-Rでもそうだったが、トラブルが起こった時、最初に疑うのはメディアではなくドライブ、というのがユーザーの心理だからだ。その結果、ドライブメーカーのサポートには、“濡れ衣”の苦情やクレームが大量に寄せられてしまう。

 「低価格で低品質のメディアは何とかならないのか。規格を満たしていないものは、売ってはいけないとするべきなのではないか」。あるドライブメーカーでは、こう苦言を呈する。

DVD-RAMの交替処理機能を“悪用”する粗悪メディア

 低価格・低品質メディアによるトラブルは、低価格化が著しいDVD-Rメディアだけに限った話ではない。その他の記録型DVDメディア全般にも言えることだ。この中で、笑い話とすら言えそうな話が起きているのが、DVD-RAMメディアだ。

DVD-RAMメディアには、メディアに欠陥があったとき、交替処理を行うという機能がある。これは、メディアに多少の欠陥セクタが存在した場合、エラーがあるセクタを、交替領域にある正常なセクタと交替させるというものだ。つまり、物理的にエラーが存在していた場合でも、ユーザーが使用する領域(論理エリア)には、見かけ上、エラーが存在しなくなるのである。

 これはDVD-RAMの最大のメリットであり、DVD-RAMが信頼性の高いメディアとして、業務用のアーカイブストレージで広く普及している理由でもある。

 ところが、“粗悪なDVD-RAMメディアでは、この機能を悪用。粗悪なDVD-RAMを製造しているメーカーは、あらかじめこの機能をアテにしてメディアの製造しているのだ。低品質を指摘されても、彼らから言わせると、「DVD-RAMは、交替処理があるからこれでいいんだ。何の問題もない」となる。悪用ではなく、“有効利用”といった感覚なのだろうか。

 だが、これは、ドライブを設計しているメーカー側から見ると困った話。というのも、いくらDVD-RAMといえども交替領域を無限に確保しているわけではないからだ。その領域は100Mバイト強ほど。この領域をすべて使い果たすと、当然、欠陥セクタとしてマークされ、メディアの記録容量が減っていくことになる。

 PC用データだけを記録しているのであれば、確かに記録容量は減るが、さほど大きな問題は発生しない。こういった使用方法もありかと、妙に納得させられるぐらいだ。だが、こういった粗悪メディアは、民生用のDVD-RAM/Rレコーダでは問題が発生しかねない。

 というのも、DVD-RAM/Rレコーダでは、映像をリアルタイムで記録するために「AVライト」と呼ばれている特別な記録方法が使用されているからだ。AVライトは、DVD-RAMにおける記録後のベリファイ処理をスキップし、高速にデータの記録を行うというもので、記録中に欠陥セクタらしきものを発見したとき、最悪のケースではそのセクタすべてを「スキップ」し、次のセクタに記録するという手法を採る。これは、そういった領域(欠陥と思われるセクタ)に映像を記録し、ブロックノイズなどが発生することを抑えるために考えられた機能である。

 しかし、こういったことが頻繁に発生すると、記録容量は単純に減っていってしまう。結果として、粗悪なDVD-RAMメディアをAV記録用に使用すると、アテにしていた記録容量がなくなってしまう、ということさえ起こりうるのである。実際、あるドライブメーカーでは、「DVD-RAMでは、交替処理をあてにしてメディアを製造するところがあって困るんですよ。本来、そんなことをしたらいけないはずなんですが……」と嘆いていた。

CD感覚で作るから品質が悪い

 安いのは大歓迎。だが品質が悪いのは困る。ではなぜ粗悪なメディアが生まれるのか、あるメディアメーカーの技術者は、「台湾メーカーの多くは、CD-Rの感覚でメディアを製造するから品質が悪いんです」と指摘する。

 記録型DVD用のメディアの製造工程は、CD-Rの製造工程とそう大きくは変わらないが、難易度はより高い(DVD-Rの製造工程については、この記事参照)。

 特に難しいと言われているのは、基板の成型と、作成した基板を張り合わせる2つの工程だ。まず、基板の成型工程には、記録層をもつ基板の作成と張り合わせに使用するダミー基板の作成の2つがある。いずれも反りがない基板を製造しないと、張り合わせたときにメディアが反ってしまい、粗悪なメディアが製造されてしまうことになる。

 特に基板を成型するときの「時間」は重要なポイントだ。これをあまりに短くすると反りのあるメディアが作成できてしまう。

 だが、メディアを安価にするためのポイントもメディアの成型時間の短縮にある。というのも、基板の成型にかかる時間を短縮すれば、1ラインで製造できるメディアの量を物理的に増やすことができるからだ。大量生産によって価格を落とすメディアの製造上、これは欠かせないことだ。メディアメーカーでは、いかに製造時間を短縮し、1ラインで製造できるメディアの量を増やしながら、品質を維持するかということがノウハウの1つになる。

 安価な台湾メーカー製のメディアの品質が悪いのは、まさにこの部分でのノウハウが足りないからだ。CD-Rを製造しているのと同じ感覚でやってしまえば、簡単に粗悪メディアが製造される。まさに上記の技術者が指摘した点である。

 また、CD-Rにはなかった張り合わせ工程でも品質差が生じる。国内メーカーは、この点でもかなりのノウハウを蓄積しており、メディアを垂直に落下させても基板が割れてしまうといったことはほとんど起こらない。しかし、台湾メディアでは、何度も繰り返すと往々にして簡単に割れてしまう。張り合わせ工程をうまく行えないと、メディアの反りの原因にもなる。

メディアの使い分けを

 とはいえ、記録型DVDメディアの低価格は、今後、より一層進むだろう。そうすると、おそらくさらなる製造時間の短縮をせざる得ない。その結果、さらに粗悪なメディアが出回ってくる可能性もある。

 繰り返すが、安価なメディアは、機器の普及には欠かせないものだ。筆者はこれを否定する気は毛頭ない。だが、あまりに粗悪なメディアにデータを記録するのは、やはり注意が必要。メディアを購入するときは、そういった点に注意し、重要なデータは、品質が安定している国産メディア、ホビー用やテスト用には安価なメディアといった使い分けをお勧めしたい。

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