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やせたいと思っていても「少し食べるだけで太ってしまう人」もいれば、「いくらドカ食いをしても太らない人」もいます。肥満には遺伝子が関係していることがわかってきました。 ■ 肥満体質は遺伝する 肥満の原因は、食べたエネルギーより消費するエネルギーが少ないことがあげられますが、「遺伝」も原因のひとつです。ただし「肥満の体型が遺伝する」のではなく、「体脂肪を貯えやすい」「エネルギー消費が少ない」といった太りやすい性質の遺伝です。 太りやすいという遺伝に食べ過ぎや運動不足といった環境要因が加わると、肥満になります。太りやすい遺伝子を持っている人と持っていない人では、同じダイエットをしても、成果が違ってきます。 肥満に関係する遺伝子は世界中で40以上見つかっており、1つの遺伝子の関与は小さくても、複数が組み合わさると、肥満する確立は高くなることがわかっています。 では、最近、明らかになってきた、代表的な肥満遺伝子2つを紹介します。 ■肥満に関係する遺伝子(1)”ベータ3アドレナリン受容体遺伝子” ひとつは、”ベータ3アドレナリン受容体”遺伝子です。 太りやすく、やせにくい人は、この遺伝子が一部分変異していて、ベータ3アドレナリン受容体が正常な機能を果たせなくなっているのです。この異常はほとんどの人種に見られますが、特に日本人には多いといわれています。 この遺伝子に異常があると、正常な人に比べ、1日に消費するエネルギーが平均200kcal少ないことがわかりました。つまり、この遺伝子に変異があると正常な人よりも、ご飯1杯分余計に食べていることになるのです。 ■肥満に関係する遺伝子(2)”ob遺伝子” もうひとつは、食欲を抑制するレプチンというホルモンを作るob遺伝子です。1994年にアメリカのフリードマンらによって、「obマウス」と呼ばれる肥満マウスから見つけられました。 正常なマウスは過食すると肥満を防止する仕組みが自然に働き、食欲がなくなって食べるのを止めますが、obマウスはいくら食べても食欲がおちずにひたすら食べ続けます。 obマウスに正常なマウスの血液を輸血すると食欲が低下して過食が止まることから、正常なマウスには、obマウスにはない食欲をコントロールする「物質」があると考えられ、その結果、突き止めた物質をレプチンと名付けました。 レプチンはおもに身体の脂肪細胞から分泌され、脳の視床下部に働いて、「エネルギーは十分」だという信号を伝え、食欲を抑える作用があります。 obマウスには、先天的にレプチンを分泌できないタイプと、レプチンを感知する脳のセンサー(受容体)がないタイプの2種類があり、食欲の抑制がかからなかったこともわかってきました。 人におけるレプチンも見つけられ、現在遺伝子解析も完了し、抗肥満薬や糖尿病薬の開発につなげる研究が行われています。 ■どの程度遺伝が関係しているか では、どれくらい遺伝の影響があるのでしょうか。両親のタイプによる、子どもの肥満発生率について、以下の様なデータが報告されています。
このデータだと、肥満には遺伝が大きく関係しているように見えますが、一般には遺伝よりも環境の影響が大きいといわれています。 アメリカでのある研究では、一卵性双生児を別々の環境で20年間生活させた実験があります(ちょっと恐ろしいですね)。一卵性でも肥満環境では「肥満」、そうでない環境では「正常体重」となり、その後、環境を同じにしたら両方とも肥満になったそうです。 そのほかに、子どもが養子であっても、親が肥満であれば肥満になったり、夫婦で一方が肥満だと配偶者も肥満したり、家族が肥満だと飼い犬まで肥満するという報告もあります。 肥満は遺伝との関係よりも生活習慣のほうが関係が深く、その原因は「遺伝3割、環境7割」といわれています。 ■遺伝をふまえたダイエット これらの遺伝子が明らかにされていない昔は、どんな人でも一律のエネルギーの食事指導をされていました。もし成果に差が現れても、成果の上がらない人はきちんと食事制限を守っていないのだと思われていました。 しかし、肥満外来で遺伝子診断ができるようになり、肥満遺伝子を持つ人には、持っていない人よりも多く食事制限をし、成果を上げられるようになってきました。 近い将来、肥満を解消するには、まず、自分が太りやすい遺伝子を持っているかどうかを調べ、その人にあった確実な方法でダイエットすることができるようになるかもしれません。 ■ トップページ■ |
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