「レイったら、いったい何やってるのかしら?」


リツコさんが時計を見ながらいらいらしている。


僕も一瞬心配したが、ふとある事を思い出す。


「リツコさん。レイのカードの更新そろそろでしょ」


「……」














WANDERING CHILD 第四話














シンジが入り口まで迎えに行くと、レイはそこに立ち尽くしていた。

ネルフ名物ともいえる長い長いエスカレーターをレイと一緒に降りていく。

(そう言えば前回は平手で叩かれたんだよな)

シンジは苦笑しながらレイに話し掛ける。

「今日これから再起動の実験だよね。今度はうまくいくといいね」

シンジは一呼吸おくと、レイの表情をうかがってから言葉をつづける。

「綾波は、怖く無いの?」

「どうして?」

一緒に夕食を食べたり、レイの分も弁当を作ったりした効果だろうか?

言葉はそっけないものの以前のような冷たさは感じられない。

もっともゲンドウに対する時ほどでは無いのだが、それでも確実に雰囲気は和らいでいる。

「前の実験で大怪我したって聞いたから、平気なのかなって思って」

「あなたは碇司令の子供なんでしょ。

信じられないのお父さんの仕事が」

シンジはわざと前回と同じように話し掛けていた。

それは、レイが前回と比べて心を開くようになったという実感があるからだ。

前回と違った答えを期待したのだ。

だが返ってきた答えはまったく同じモノだった。

しかし、それも無理は無かった。

何よりゲンドウは手のひらに火傷を負ってまでレイの命を救った、命の恩人なのだから。

その絆はやはり大きかった。

ただ叩かれなかった事は大きな違いだろう。

やや落胆しながらも、少しずつやるしかないとシンジは気を取り直す。

「信頼ってさ、絆が無いと生まれないと思うんだ。

綾波は僕といろいろな話しをして、いっしょにいろんな事をして少しずつ絆を作ってる。

僕は、綾波のことは信頼してるよ。

でも父さんとは、僕が4歳のときに先生のうちに預けてから絆を作るようなことは何もしていない。

絆も無いのに信頼なんてできないよ」

パァン!!

レイの手が閃き、派手な音の後にシンジのほおが染まる。

「碇司令は、あなたのお父さんなのよ。

どうして碇司令と絆を作らないの?碇君には本当のお父さんがいるのに」

レイはシンジの顔をじっと見つめる。

レイの言葉は、シンジにとって頬を叩かれたことよりもショックだった。

(そうだ、僕には父さんがいる。

僕は、父さんと積極的に絆を結ぼうとしていただろうか?

それどころか、父さんを避けていたかもしれない。

そうだ、結局僕は逃げていただけなんだ)

シンジは自分の不甲斐なさに思わず口に出す。

「くそっ!」

レイが不思議そうな顔になる。

「何?」

シンジは、それに気付かない様子で続ける。

「もう逃げないって決めたのに。でも、もう逃げない」

レイはそんなシンジの様子を見つめながら、しかし自然な様子で答えた。

「そう」



「0.3……0.2……0.1。突破!ボーダーラインクリア。零号機起動しました!」

みんながホッとして一瞬肩の力を抜いたとき、シンジはこれから来るであろう『第5使徒』の事を思い表情をこわばらせていた。

「了解。引き続き連動試験に入ります」

そのとき、警報が鳴り響く。

第5使徒『ラミエル』の襲来である。



『エヴァ初号機発進準備よし』

『発進!』

ミサトの号令とともに初号機に急激な加重がかかる。

その時、モニターの第5使徒の中央にある黒い帯状のものが輝きだす。

シゲルの声が大きくなる。

『目標内部に高エネルギー反応!』

ミサトの声も負けじと大きくなる。

「何ですって!」

『円周部を加速、収束してゆきます』

ミサトの大きな声ので、やや冷静さを取り戻したシゲルがオペレートを続ける。

「……まさかっ!」

リツコが何かに気付く。

『初号機シンクロ率上昇していきます。シンクロ率95%を突破』

射出口から姿を現す初号機。

マヤの声に、ミサトは何かを感じる。

「ダメ!戻してっ!!」

使徒から発射される光の洪水。

シンジは、ミサトの声が聞こえるより一瞬早くA.T.フィールドを展開する。

『初号機A.T.フィールド展開』

使徒の放つ光の奔流が、赤い光の壁にさえぎられる。

『シンクロ率100%を突破!』

お互いの光が強くなっていく。

シンジのシンクロ率は確かに高い。しかし初号機が覚醒していない現状では限界がある。

「ミサトさん!!早く戻してください!!」

シンジの声にミサトは瞬時に反応する。

「戻して!早く!」

初号機はA.T.フィールドを展開したまま格納されていく。

初号機が完全に隠れると、使徒の攻撃は止まった。

(やはり、ヤシマ作戦になるのか)

シンジは、使徒の攻撃にさらされた零号機の姿を思い浮かべ、ため息をついた。

わずかに肺に残っていた空気が泡となってL.C.L.に排出された。



「なるほどね」

作戦室でミサトは、腕を組んで報告を受けている。

使徒は、ゼロ地点と呼ばれる第3新東京市の中心部に来ると、そのクリスタルのような8面体の体の下から巨大な削岩機を出して掘削をはじめた。

初号機をいったん格納した後、エヴァの1/1ダミーバルーンや通常兵器による攻撃を行い使徒の情報収集に努める。

「これまで採取したデータによりますと、使徒は一定距離内の外敵を自動的に排除するものと推測されます。

エリア進入と同時に過粒子砲で100%狙い撃ち。エヴァによる近接戦闘は危険すぎますね」

マコトが、分析結果をミサトに報告する。

「A.T.フィールドはどう?」

「健在です。相転移空間を肉眼で確認できるほど強力なものが展開されています。

誘導、火砲、爆撃などの生半可な攻撃では泣きを見るだけですね、こりゃ」

マコトの口調に、ミサトもややくだけた言い方をする。

「攻守ともにほぼパーペキ。まさに空中要塞ね。

で、問題のシールドは?」

「敵はここ、ネルフ本部に直接攻撃を仕掛けるつもりですね。

明朝午前0時00分54秒には、22層全ての装甲防御を開通してネルフ本部に到達するものと思われます」

「しゃらくさい」

絶望的とも思える報告を受けながらも、ミサトは不敵な笑みを浮かべる。



目標レンジ外からの超長距離射撃、それがミサトの出した結論だった。

使徒に近づけないのならその外から高エネルギーで、A.T.フィールドごとぶち抜けばいい。

大出力の火器がネルフになければ戦自研からポジトロンライフルのプロトタイプを借りてくればいいし、そのための電力は日本中から集めれば良い。

シンプルと言えば、あまりにもシンプルな作戦である。

しかし、それだけに柔軟な発想と大胆な決断力が必要とされる。

天才肌の作戦指揮官――ミサトの面目躍如である。

しかし、シンジは知っていた。この作戦には盲点がある事を知っていたのだ。

「……以上が本作戦、ヤシマ作戦の概要よ。質問は無い?」

「あの……」

「ん!なに、シンちゃん?」

シンジは、一瞬ためらったが思い切ってミサトに告げることにする。

「もし、使徒が撃ってきたらどうなるんですか?」

それはミサトにとって予想された質問だったため、即答することが出来た。

「だぁーいじょうぶだって。シンちゃんは心配性なんだから。

ちゃんと敵の狙撃範囲を調べて、その1.5倍の距離から射撃すんだから。

ま、本当なら2倍以上の距離を取りたかったんだけどね。

そこ以外に適当な射撃地点は無いし、でも十分に距離はとってあるから心配いらないわよ」

そうなのだ、作戦に問題は無かったのだ。

ただミサトは知らなかったのだ、初号機が特別な存在である事を。

シンジは、前回と違ってミサト達の作戦行動を見ていたので気付いたことがあった。

「でも初号機は、ダミーと違って攻撃の意思を示す前に攻撃を受けました」

「……」

ミサトはしばらく考えている様子だったが、リツコのほうを振り返ると訊ねる。

「リツコ、もし使徒も撃ってきたらどうなるの?」

「そうね、おそらく互いに干渉しあって外れるわね」

「ふむ」

ミサトの頭脳にシンジの言葉はどこか引っかかった。

「日向君。作戦課の人員、何人割ける?」

かたわらにいたマコトに訊ねる。

「そうですね。今回の作戦はなんと言っても時間との勝負ですからね……10人が限界ですか。

それ以上は、あちこちに無理が出ますね」

「6人でいいわ、十分後に作戦室にあつめて」

「了解」

ミサトはシンジ達のほうに向き直った。

「作戦開始までまだ時間が有るから、食事をとって待機してちょうだい」

ミサトはそう告げるといそいそと部屋を出て行った。



待機室のベンチに座りながら、シンジはこの後のヤシマ作戦の事を考えていた。

しかし何度考えても同じ結論しか出なかった。

(僕が防御を担当する)



「本作戦における各担当を伝達します。

シンジ君は初号機で砲手を担当。レイは零号機で防御を担当」

「了解。私は初号機を……碇君を守ればいいのね」

フラッシュバックとでも言うのだろうか?

シンジはレイの言葉を聞くと、使徒の過粒子砲によって解けていく零号機の映像が浮かぶ。

「僕が防御を担当します。

もし使徒が撃ってきた場合、防御の担当は危険が大きすぎます。

初号機には使徒の過粒子砲に20秒以上耐えた実績があります」

だが、シンジの思惑どおりにはならなかった。

「シンジ君が砲手を担当したときと、レイが担当したときでは作戦の成功率に倍近い差がでるのよ。

シンジ君は砲手を担当、これは決定事項よ。

まぁー、あれからシンちゃんが言ってた事もちゃんと考えてあるし大丈夫だって」

ミサトはそういってウインクをした。

「分かりました」

そう言われれば、シンジもうなずくしかなかった。



「綾波はどうしてこれに乗るの」

二人は、仮設のエヴァ搭乗用タラップの上にいた。

住民は避難しつつあるのだろう、街の灯りは何時もよりやや少ないように思われる。

「絆だから」

レイはシンジのほうを向くこともなく、座り込んだままで街のほうを見ながら答える。

「他に何も無いもの」

シンジは悲しそうな顔をするとレイに優しく話し掛ける。

「今朝、綾波に言ったよね。絆って少しずつ作っていくものなんだ。

お互いが絆を作ろうとしないとダメなんだ。

綾波は努力をしてるのかい?それは、本当に絆なの?」

「私は……」

レイは始めてシンジのほうに顔を向ける。

レイにしては珍しく、気ぜわしく視線をさまよわせるしぐさをする。

「時間だ、行こう。

綾波、また後でね」

シンジが歩き出そうとすると、珍しくレイが話しかけてきた。

「『また後で』……人と別れるときの挨拶は『さよなら』」

シンジは軽く微笑むとレイに優しく言葉をかけた。

「『また後で会おう』というのは必ず生き残ってもう一度会おうという約束。

一つの絆。僕と綾波との絆だよ」

レイはハッとした表情でシンジの顔を見つめる。

「絆……」

「そう、これも絆の一種。

綾波が気付いてないだけで、あちこちに絆はあるんだよ。

綾波がもう少し努力すれば、きっといっぱい見つかるよ」

「絆……」

レイはもう一度呟くとやがて落ち着いた何時もの表情になっていく。

だが、その表情には今までに無い輝きが確かに存在していた。

「本当に時間がなくなっちゃう。綾波、行くよ」

シンジの言葉に一瞬つまらなさそうな顔をすると、レイも零号機のほうに向かう。

プラグのそばまで来ると、レイは意を決したように振り返るとシンジに声をかけた。

「碇君、また後で」

プラグに乗りかけていたシンジは驚いてレイのほうを振り返った。

「綾波、また後で」

そのときレイは、確かに微笑んでいた。

前回と違って、どんな顔をすれば良いのか気が付いたのだ。自然と微笑んでいたのだ。

空に浮かぶ満月のように静謐な、それでいて嬉しそうな笑みだった。



ヤシマ作戦の翌朝、シンジは保安諜報部の職員とともに駅に来ていた。

抜けるような青空。

小さな鞄を持ったシンジは黒い服に黒眼鏡の男から切符を受け取り、改札を通ろうとする。

「シンジ!」

「シンジ!!」

その時、二人の少年の声がほとんど重なるように聞こえてきた。

「トウ……鈴原君と相田君」

シンジはとっさに名前で呼びそうになる。

黒ずくめの男に、時間に余裕がある事を確かめてから二人のほうを振り返る。

全速力で走ってきた二人は、呼吸を整えていた。

「ほらトウジ、しゃべれよ」

すでに呼吸は正常になっているにもかかわらず、なかなか切り出そうとしないトウジをケンスケがうながす。

「碇、お前も色々悩んでてんてな、ケンスケから聞いたで。

その……二発もどついてすまなんだ。

せやから……その……つまり、碇、ワシをドツいてくれ」

「ぷっ。くくくくく……」

シンジは、あまりに前回と同じ展開に思わず笑ってしまった。

「ナンやねん。こっちが必死になって謝ってんのに、やっぱお前はいけ好かんヤツや」

むくれるトウジにケンスケが苦笑しながらフォローを入れる。

「こういう恥ずかしいヤツなんだよ。

ま、それでまるく収まるなら殴ったら」

「はよう、時間ないんやろ」

「じゃ、一発だけ」

「よし、こんかい」

「やっぱり止めとく、貸しって事にしとくよ」

「おのれはホンマに!まぁ、そういう事にしといたる」

トウジは、柄に無い事をしたと思っているのだろうか、顔を赤くしてそっぽを向く。

「ありがとう、鈴原君」

「ん、まあな。

ナンやその鈴原君ちゅうの、なんか他人行儀やからワシのことはトウジでエエから」

「トウジ、なに照れてるんだよ。僕のこともケンスケで良いからな」

「うん、ありがとう。

トウジ、ケンスケ、僕のこともシンジって呼んでくれてかまわないから。

それはそうと、どうしてここが?」

前回とは状況が違うのに見送りに現れたのだ、本当にただの勘なのだろうか?

「種明しをするとさ、シンジのセキュリティーレベルが下がってたからな。

もしかしたらって思ったんだ」

「なるほどって、ケンスケ、そんな事をやってるの!?」

「まあね。後は勘ってヤツだな。ここんとこ何十人って同級生を見送ってきたんだ」

「そっか」

今まで横を向いていたトウジがやおら向き直ると勢い込んで話し出した。

「シンジがおらんようになったら、いずれワシ等もこの町から出て行かんならんやろ。

せやけど……」

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ」

シンジは、一人でエキサイトするトウジを慌ててとめる。

「なんやシンジ」

これから盛り上がるトコやったのにとばかりにトウジは不満そうな顔をする。

「別に、ずっと居なくなる訳じゃないよ」

「そうなんか」

「そうなのか」

いぶかしむ二人の顔を寄せると声のトーンを落とす。

「あんまり大きな声じゃ言えないんだけどね。ちょっと第二のほうに用事があるんだ。

それで、その、護衛の問題とか色々あって一時的にパイロットを辞めた事になってるんだ。

すぐに帰ってくるよ」

「なんや、そうやったんか」

「心配して損しちゃったよ」

「うん、ごめん。そろそろ時間だから」

そういうとシンジは、二人から離れて歩き出す。

「必ず帰ってこいよ!

ええか、ワシらは離れてても友達やからな」

「だから、帰ってくるって言ってただろ」

シンジは漫才をしている二人に向かって大きく手を振った。

トウジとケンスケも、それに答えて手を振りかえした。

シンジは嬉しかった。

二人との会話は、苦しかった前回での数少ない日常だったのだから。



車窓を後ろに流れていく単調な景色をぼんやりと眺める。

列車にはシンジ一人だった。

特別車が用意されたのだ。

シンジはいらないと主張をしたのだが、護衛の関係上仕方ないといわれ説得された。

何しろ警備に不慣れな作戦課の職員がミサトの命を受け密かに護衛についているのだ。

出来るだけ環境を整備しなければならない。

静かな車内に単調なリズムだけが流れる。

シンジは昨夜の戦闘を思い返していた。



「……発射準備が出来たら、ダミーが使徒に攻撃を仕掛けるわ。

使徒がダミーに向けて過粒子砲を発射すると同時に、ポジトロンライフルを発射。

いいわね?」

「はい」

戦いは、あっけなく終了した。

シンジの照準よしの声とともにダミーが射撃体勢に入る。

それと同時に使徒からダミーに向かって過粒子砲を放つ。

シンジが引鉄を引き絞る。

暗闇が一瞬にして昼間になる。

そして……

結局、レイの出番はなかった。



「やっぱりミサトさんはすごいな」

シンジは思う。

自分にはとてもこんな作戦は思いつかない。

(やっぱり、僕一人でやろうと思うのは思い上がりなんだろうな)

だがしかし、だ。

(不用意に話すわけには行かない)

シンジはあまりにも多く見すぎていた。

人の心は強い、しかし時に脆く壊れてしまうのだ。

そして、特にシンジの抱えているものは容易に人の心を壊しえる。

(でも、いずれ話さなきゃ)

景色は相変わらず、シンジの心に語りかけることなく後ろに流れていく。



第二東京市の郊外、市内を一望できる高台の比較的高級な住宅地に先生の家はある。

シンジは久しぶりにバス停から懐かしい坂道を登っていた。

「どうしたモンかな」

実は、まだどうするか何も決めていなかった事に気が付く。

何かが変わるような気がしたのは事実だが、そんな気がしただけなのもまた事実だった。

「うーん」

そんな事を考えながら歩いていると懐かしい門が見えてきた。

時刻はすでに夕刻になっていた。

先生はすでに帰宅しているのか、ガレージに車が止まっているのが見える。

ためらいがちに門の中を覗くと、懐かしいものが見えた。

シンジが中学生になってから第三に来るまでの期間を過ごした、離れの勉強部屋だ。

唐突に部屋の明かりが灯され、部屋の中が窓からうかがえるようになる。

おばさんが掃除を始めたようだった。

シンジが部屋に残した品――参考書、チェロのスコアそして前の学校の制服を一つ一つ動かしながら、慈しむように。

唐突にシンジは理解した。

自分が愛されていた事に。

拒絶していたのは自分だった事に。

シンジはバス停に向かって歩き出した。

曇り空のせいだろうか?何時もより早い時間にもかかわらず街灯に明かりが灯る。

シンジは昨夜の戦闘が終わった後、レイと一緒に街を眺めていた時の事を思い出していた。

暗闇だった街に明かりが灯ってゆく。

人の息吹が感じられるようになってゆく。

「そうか」

シンジは気付いた。

僕が護ったのは街じゃなかったんだ。

街に住む人だったんだ。

街に住む人の生活だったんだ。

街に住む人たちの生活の証としての町並みだったんだ。

身近にいる人だとか、見ず知らずの人だとかは関係ない。

結局、サードインパクトは起こってしまうかもしれない。

それでも構わない。

たとえ一分一秒でもいい、少しでも先に延ばせるのなら。

そのためなら僕は闘える。

心から、そう思えた。



「シンジ君、お帰りなさい」



「ただいま、ミサトさん」





つづく





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