「ウオオオォォォォォォォォオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーー!!!!」


シンクロ率400%超。


真の力を取り戻した初号機は、残る五体の量産機を次々に殲滅していった。














WANDERING CHILD 第弐拾九話














その魂を揺さぶるような初号機の咆哮に、アスカは意識を取り戻した。

そのとき、初号機のシンクロ率が400%を越えたことを告げる、マヤの絶望的な声が聞こえてくる。

はじかれるようにアスカの意識は覚醒した。

よみがえる恐怖。

あれは第14使徒ゼルエル戦。

シンクロ率が400%を超え、エヴァに取り込まれたシンジが戻らなかったあの日々。

まして、今度もサルベージが成功するとは限らないのだ。

もう手遅れかもしれない。

アスカはそんな考えを、心の奥に押しやろうとしていた。

そのとき、最後の白いエヴァのコアを握りつぶした初号機が崩れるようにその場に膝をついた。



「シンジィーー!」

それを見たアスカは慌てて弐号機から降りると、心のそこから叫びながら走りだした。

またシンジが初号機に取り込まれたら? サルベージが失敗したら?

頭の中を駆け巡るいやな想像を振り払う。

そしてアスカは瓦礫が散乱し、足場の悪い中を転びそうになりながら息を切らせて初号機の元に走り寄る。

その目に、ゆっくりエントリープラグがイジェクトされる様子が映った。

姿をあらわす少年。

「シンジーッ!!」

必死で駆け寄るアスカの脳裏には、ただ「よかった」という言葉しかなかった。



やがて見詰め合う二人。

アスカはそこでふと違和感を抱いた。

「シンジ? シンジ……よね?」

不安げなその声。

シンジは悲しげな瞳でアスカを見つめながら、ゆっくりと首を横に振った。

「彼は死んだよ。……僕はあの碇シンジじゃないんだ」



何かを思い出すかのように、一度遠くに視線を送ってからシンジは再び話しはじめた。

「そこは何も無い世界だった。

砂浜に僕が倒れていた、手を伸ばせば届くところに向こうの世界の惣流さんが倒れていた。

"赤"い海と"赤"い空が広がっていて、そして、血の匂いがしていた。

それ以外に、何も無かった」

軽く目を閉じて苦悶の表情を浮かべる。

「たぶん、あれがサードインパクトの起こった後の世界だと思う。

本当に何も無い、空虚な世界だった

キミの知っている碇シンジは、その世界の碇シンジだったんだ」

軽く俯くと、頭を振る。

「父さんに呼ばれてここに来た時、非常事態宣言が出されていたんだ。

どうしようか途方にくれていたら、第3使徒が姿を現して。

なんだか分からないけど僕は逃げ出していた。

巡航ミサイルが飛んできて、近くで爆発して。もうだめだと思ったら、ミサトさんが助けてくれて。

……気付いたら僕は、僕はどこか暗いところに居たんだ。

ぼんやりともう一人の僕の行動が、話す言葉が、考えてることが、記憶が伝わってきた。

怖かったんだ。

父さんに呼ばれたときは少し期待もしていたんだ、もう一度、父さんとやり直せるかもしれないって。

でも、彼の記憶が僕に流れてきた。

みんな追い詰められてた。みんな死んでいった。

結局、苦しいだけで楽しいことは何も無かった。

……怖かったんだ」

アスカは何も言うことが出来なかった。

シンジの過去の話を聞いたときの衝撃は、今でも覚えている。

そして目の前にいるこのシンジは、その記憶が直接伝わってきたのだと言うのだ。

そのショックは押して知るべきだろう。

うつむいてしまったアスカから視線をそらし、ふっと息をついて話を再開した。

「僕は、僕は彼と違ってずっと逃げていたんだ。

何時だったかな……彼と直接話をしたことがあったんだ。

絶望的な状況だった。

現実に戻っても、また同じ事を……あのころは、彼の記憶と僕の記憶が混乱していたんだけど。

途中まではまったく同じ過去を持っていたからね。

だから、また同じ過去を繰り返すだけじゃないかって。

またあの絶望的な現実を突きつけられるだけじゃないかって。

そう思って、僕は膝を抱えていたんだ。

でも彼は戦わないといけないって、今度こそ大切な人たちを守らないといけないって。

あの後、母さんの声も聞こえてきて、僕も戦わないといけない。そう思ったんだけどね。

だけど何も出来なかった。

結局、僕は逃げてばかりなんだ」



ようやく自分の気持ちに気付けた。

ようやく素直に自分の気持ちを伝えられそうだった。

それなのに、その人はもう居ないというのだ。

目の前に居る少年が彼女のよく知るシンジではないという事は、すぐに納得できた。

まっすぐ前だけを見つめていたシンジの澄んだ瞳と、後悔の念にさいなまれ俯いている少年。

しかし、そんな差異以上にどこか似た部分を感じていたのも確かだった。

そのとき、アスカの心に何かが引っかかった。

この少年が戦う決心をしたというのはおそらく第14使徒戦の後、シンジが初号機に取り込まれた時のことだろう。

その後の戦闘時に記録された異常とも言えるシンクロ率。

そしてシンジとの大切な思い出である初陣時のダブルエントリーと、そのときに記録した高シンクロ率。

すべてが一本の線につながった。

そう、あの高シンクロ率は二人のシンジがダブルエントリーと同様に、一緒にシンクロしていたからなのだ。

確かにこの少年は一度、戦いから逃げて自らの心の内に閉じこもっていた。

しかしアスカはそのことを責める気にはなれなかった。

あのような結末が来ることを知らされれば、自分もすべてを投げ出したくなるかもしれない。

だが、この少年は再び自ら戦うことを選んだのだ。

ダブルエントリーで高シンクロ率を計測するには、二人の考えを統一する必要がある。

もし戦いから逃げていたのなら、あのような高シンクロ率は出せないはずだ。

この少年もまた確かに碇シンジなのだ、アスカはそう思った。

そのことが、なぜかアスカにはひどく嬉しかった。



その日の夜、精密検査を終えて家に戻った二人は遅めの夕食をとっていた。

戦闘の後始末など、山のように仕事の残っているミサトはしばらくネルフに泊り込むことになる。

気まずげで会話の少ない二人きりの食卓。

アスカは視線をそらすように窓の外にぽっかりと浮かぶ月を見つめながら、昼間のことを思い出していた。



「そう、彼は帰ったのね」

リツコはまるで、そのことを知っていたかのようにそう言った。

「いくつかある可能性のなかで、確率の高そうなものの一つだっただけよ」

不思議そうな面持ちのミサトに、リツコはそう答えた。

戦闘後の精密検査を受けたあと、ミサトとリツコはその衝撃的な真実を二人から聞いたのだ。

ぴんと張り詰めたような沈黙がしばらく続いた。

そんななか、思いつめたような声でアスカが口を開いた。

「シンジは、……アイツは戦いの終わったこの世界を見ることは出来ないの?

アイツはアタシ達のために戦って、苦しいのに戦って。

……それでアイツ自身はどうなったの?

なにも報われないの? そんなの悲しすぎるよ」

そして、アスカは声を上げて泣いた。

それまで必死に張り詰めて、自分のことだけで精一杯だったアスカが初めて他人のために流した涙だった。

それは、とてもきれいな涙だった。



その時、そっと差し出されたハンカチ。アスカは深く考えることなくそれを受け取った。

そして遠慮がちにそっと肩にのばされた手。

その手の暖かさにどこか安心したアスカは、さらに泣いた。

しばらくして、ようやく泣き止んだアスカはその手がもう一人のシンジのものであることに気付いた。

「あのさ、僕は最後まで彼と一緒だったからなんとなく分かるんだけど、彼は後悔なんてしていなかったよ。

それに、彼はこの世界を、惣流さんを守るために戦ったんだから。

……ええと、だから、それなのに君が泣いていたりすると僕は悲しい……

いや、もちろん僕も悲しいんだけど、つまり、あの世界のシンジも悲しむと思うんだ。

だから、つまり……」

それは、あまりのも不器用な慰めだった。

でも、だからこそアスカは素直に受け止めることが出来た。

(バカ、アタシは居なくなったシンジのことで泣いてるのよ?

それを素直に慰めちゃって。

アンタじゃなくてあのシンジのほうがいいって言ってるのに)

そう思うと何故かおかしくて、アスカは泣き笑いのような表情になった。

「これは推測にすぎないのだけれど」

アスカが落ち着くのを待ってから、リツコは話しはじめた。

「私たちの世界はサードインパクトを防いだわ。

つまり、リリンは単体ではなく郡体を選んだのよ。

この経験をあのシンジ君は元の世界に持ち帰ったんじゃないかしら。

これは私の勘だけど、彼はそのためにこの世界にやってきたのだと思うの。

もちろん経験さえあれば必ず郡体に戻るということはないけれど、少なくとも可能性は生まれるわ。

いつかきっと彼の住んでいた世界も、もう一度生命の住む星に戻ると思うわ。

彼はきっと、そのために戦っていたのよ」

そしてリツコは苦そうな顔でタバコを燻らした。



「あの、ええと、惣流さん大丈夫?」

遠慮がちなシンジのその声で、アスカは我に返った。

いつのまにか、好物のハンバーグはほとんど手をつけられることなく冷たくなっていた。

心配げに見つめるシンジの瞳。

ひたむきさと純粋さ。そしてその奥に見えるやさしい光。

(あっ)

思わずアスカは声を上げそうになる。

その瞳はアスカが愛したシンジの瞳とまったく同じものだったのだ。

そしてアスカは改めて目の前の少年を見つめた。

……やはりアスカの知るシンジとは違う。

あのシンジが持っていた強い意思のようなものが希薄なのだ。

だが、その核となる部分は同じなのではないだろうか? アスカはそう思った。

それは大きな優しさと大きな愛。

「……シンジ」

アスカは自然とそう呼びかけていた。

それはアスカが初めて「シンジ」と名前で呼んだ瞬間だった。

「えっ?」

突然そう呼ばれたシンジは、思わず戸惑いの声を上げていた。

「まったく、ボケッとした顔してるんじゃないの。

それから『惣流さん』とか『キミ』とか、そんな風に呼ばれると気持ち悪いわ。

アタシも『シンジ』って呼ぶからこれからはアタシのことは『アスカ』って呼びなさいよ。

良いわね?」

「う、うん」

それはアスカが自分を少しでも認めてくれたということだと気付いたシンジは、喜びを顔いっぱいにひろげて頷いた。



シンジが洗い物を終えたとき、アスカはベランダから夜景を見ていた。

戦闘が終わったばかりでいまだ疎開した人々は戻っておらず、明かりの乏しい寂しい夜景。

だがそれは破壊ではなく、復興に向かう町の景色だった。

そう思うと、うら寂しい感じはあまり受けなかった。

「アスカ……?」

シンジの声に振り返ったアスカの頬は涙に濡れていた。

やがてベランダの手すりに背をもたれる様にして、今度は夜空を見上げた。

一筋流れた涙が月の光にきらめいた。

「シンジに、……アイツに最後のお別れを言ってたの」

ポツリ、ポツリとアスカが話す。

「何時からかなあ……シンジとね、たまにこうやって二人で街を見ていたの。

今日はほとんど無いけど普段は灯りがいっぱいでさ、その下でいろんな家族が団欒しているんだろうなって、そう言ってたの。

アタシもアイツも、二人とも家族とか幸せな家庭とかには縁が無かった。

でも、だからこそそんな家族のために頑張ろうって、そんなこと話してたの」

シンジはアスカの方をじっと見つめながらそっと口を開いた。

「憶えてるよ」

その言葉に驚いた様子でアスカはシンジのほうに顔を向けた。

「もう一人の僕は何時も必死だったから、僕の存在に気付く余裕が有ったのかは僕には分からない。

だけど、二人の心というか魂はどこかつながっていたような気がするんだ。

彼の考えていることがなんとなく伝わってきたのは、それでだと思うし、それにたぶん僕の考えていたことも伝わっていたんだと思う。

……だから、僕も覚えているんだ。どんな気持ちでここから街の灯りを見ていたか」

シンジはその時のことを思い出すかのようにしばらく瞑目してから、アスカの隣に立って同じように夜空を見上げた。



「いつかアタシのこと好きだって言ってくれたことがあったわよね。

アレも憶えてるの?」

満天に光る星空を見上げたまま、アスカが訊ねる。

シンジはアスカのほうに顔を向けると、肯定の返事をした。

「アタシもね、シンジのことが好きだったの」

それは告白ではなく、報告だった。

そのことが分かったシンジは無言のまま空を見つめた。

一陣の風が吹き、星が一つ流れた。

時刻は午後10時を過ぎた頃だろう。

数匹のコウモリがふらふらとどこか危なっかしい様子でどこかに飛んでいった。

(僕は、ここで居場所を見つけられるだろうか?)

シンジはそのふらふらとしたコウモリの軌道を見ながら、そんなことを考えていた。

「別にあんたのことを否定するつもりは無いわ。アンタも正真正銘の『碇シンジ』なんだから。

でも、だからと言ってアンタを身代わりにするつもりも無いの。

だって、アンタはアンタで、アイツとは別の碇シンジだから」

そしてシンジのほうに向き直るとにっこりと笑みを浮かべた。

「とりあえず同居人兼、友達ってとこからスタートしよう。

きっとさ、アンタとはうまく行くような気がするのよ」

見詰め合う二人。

「前はさ、シンジのほうから告白してくれたじゃない」

「あ、うん。いや、自爆したようなものだったけど」

そうだったわね、とアスカはくすりと笑う。

「……正直、まだアンタの事をどう捉えればいいのか少し混乱してるの。

だから、アタシのなかで決着をつけられたら今度はアタシの方から、ちゃんと言うわ。

ごめんね、シンジ。それまで、待っててもらえるかしら」

そしてアスカは右手を差し出す。

「えっと、だから友情のしるしの握手をしましょう。

そしていつか、愛情のキスが出来るようになれば良いと思うわ」

そして、はにかむような表情になる。

シンジはその手をしっかりと握り締めた。

「そんな、拒絶されたらどうしようかと思っていたぐらいなのに……

ありがとう、アスカ。僕を認めてくれて。

僕は何時までも待っているよ。そして、もう返事は決まっているんだ。

だからアスカ、慌てなくて良いからゆっくり考えてよ」

その時、シンジの浮かべた笑みは確かにもう一人のシンジのものと同じ、強い意志を感じさせる透明なものだった。

そして二人は再び街の方を眺めながら、元の世界に戻っていったシンジのことを思った。

何時までも、何時までも。





"赤"い海、"赤"い空。"赤"い世界。

少年は砂浜に横たわっている。

迷いし少年の旅は終わりを告げた。

かたわらには愛しき少女。

それはあたかも新世紀のアダムとイヴ。

願わくば二人に福音がもたらされん事を。



太陽が沈むと月が昇り、月が沈むと太陽が昇る。

凪を挟んで風が海から陸に変わり、また海に吹く。

月が満ちては欠け、そしてまた満ちる。

潮が満ちては干いていく。

いろいろな事が起こり、そして何も起こらない平穏な世界。



やがてある日、はるか沖に見える巨大な少女の空蝉が砂のように崩れ去った。

二人の少年と少女もまた。

その瞬間、リリンはその本質たる知恵の実を分かちて魂とし、再び群体となった。

新世紀の始まり。

再び互いを拒絶し、傷つけ合う世界の始まり。

だけど少しだけ分かりあえるようになった世界の始まり。

やがて、その新しい世界に三人の少年と少女が生を受けた。

その3人は父母の愛を一身に受け、すくすくと幸せに育ってゆく。



これは、そんな世界のお話。

ここは第3新東京市。第壱中学校に続く通学路を二人の少年と少女が駆けて行く。

赤みがかかった金色の髪にサファイアのような澄んだ青い瞳を持つ、勝気そうな印象のはっとする様な美少女の名は惣流・アスカ・ラングレー。

その彼女の半歩前を走る少しあどけなさを残した少年は碇シンジ。

二人の両親は同じ研究所に勤める友人同士で、同じ時期に結婚した。

そして同じ年に二人が生まれ、家も隣同士。二人はまさに幼なじみだった。

何時ものようになかなか起きてこないシンジをアスカが起こし、何時ものように騒動があって、何時ものように人通りの少ない遅刻ギリギリの通学路を二人は走っている。

「ねえ、今日も転校生が来るんだってね」

次の交差点を曲がれば学校まではもうすぐ。

少し余裕の出てきたシンジは走る速度を緩めずにアスカに話し掛ける。

「まあね、ここも来年は遷都されて、新たな首都になるんだもの。

どんどん人は増えていくわよ」

「そうだね。どんな子かな? 可愛い子だったら良いのになあ」

その言葉にアスカはむくれる。

二人の関係は幼なじみ以上、恋人未満。

四捨五入すれば完全に幼なじみになるだろう。

(自分はこんなにも思っているのに)

目の前をおそらく何時もの「のほほん」とした表情をしているであろう少年に苛立ってしまう。

それでも何とか気を取り直して、ため息をつく。

ちょうど、その時だった。二人は小さな十字路に差し掛かる。

そこで、右側の脇道から飛び出してきた少女とシンジがぶつかった。

「キャーー」

二人は痛むおでこを押さえながら尻餅をつく。

一瞬、アスカと同じ制服を着たその少女のスカートがめくれて、その中の白いものがほの見える。

その少女は慌ててスカートを押さえた。

「ごめんね。マジで急いでたんだ。ホント、ごめんね」

青い髪と赤い瞳の神秘的とも言える容貌をしたその美少女は、二人にそう声をかけると慌てて駆けて行った。



そして朝のホームルーム。

今日も派手な音を立ててスポーツカーで遅刻ギリギリの時間に来た、担任の葛城ミサトが教卓の前に立つ。

「よろこべ、男子ぃ〜。今日は噂の転校生を紹介する」

そして現れた少女は、先ほどの青い髪の少女だった。

「綾波レイです。よろしく」

そしてウインクをひとつ。文句なしの美少女だ。

教室に「おおぉぉー」というどよめきが広がる。

「あああぁっ!」

思わず声を上げるシンジ。

「あんた!今日のパンツ覗き魔」

そのレイの言葉にアスカはカチンと来た。

「ちょっと、言いがかりは止めてよ。あんたがシンジに勝手に見せたんじゃない」

その反応にレイはからかうような口調になる。

「あんたこそ何? すぐにこの子かばっちゃってさ。何、できてる訳? 二人」

騒然となる教室。静かにさせようとする委員長のヒカリ。

教師でありながら面白がって煽るミサト。



そこには、にぎやかで平和な日常があった。

子供たちは戦いに身を投じる必要も無く、のびのびと青春を謳歌していた。

この平和な新世紀が、一人の少年によってもたらされたことを知る者はいない。

だが、それでいいのだ。

この日常こそが、その少年の求めていたものだったのだから。





WNDERING CHILD 完

THE END OF WANDERING CHILD 前編に続く











後書き

どーも、林原兼実です。
一応、この29話で本編は最終話になります。
逆行してきたシンジの死という、この終わり方については最後まで悩みました。
少しずつですが、愛を育んできた逆行シンジとアスカの仲は死別という形で別れることになるのですから。
もちろんシンジに、逆行シンジの思いは受け継がれているのですが……
結局、このような終わりにしたのは、"赤"い世界に残されたアスカも救ってあげたかったと言うのが大きな理由です。
二組のシンジとアスカ。私は両方とも救いたかったのです。

さて、WCの主人公は誰かと言うと、やはり逆行シンジです。
ですので、その逆行シンジのエンディングを書いて本編を閉める形にしたかったので、こうなりました。
残されたシンジとアスカ、そしてその他のキャラクターについては、エピローグにあたる「THE END OF WANDERING CHILD」で書くつもりです。
もう少し、お付き合いいただければと思います。
では。




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