結局、バルは3号機の中に引っ込んだために、回収に来たスタッフらの目に止まることはなかった。

そしてバルの言葉通り、プラグの中のトウジは精神汚染の危険もなく、無事保護された。

3号機が急に大人しくなったことに首を傾げるものは多かったが、事後処理に忙殺されることになった人々はその疑問について深く考える機会は与えられなかった。

松代の施設は復旧に追われ、3号機は予定を繰り上げて本部に移送されることに決まる。

これには一部反対するものもあったが、エヴァの管理を任されているリツコが強引に押し通す形で移送準備は整えられていく。

それと現実に3号機を放出したがる松代のスタッフもいたことも確かであった。

要するにビビってしまったのだ。

 

そして・・・ユイナは治療を受け、大事に至るということはなかった。

 

 

 

 

 

WING OF FORTUNE

第壱拾九話 シトとヒトと

 

 

 

 

 

「さぁ・・・どういうことか説明してもらいましょうか」

 

松代のスタッフが作業に追われる中で、人払いをした松代の施設の一室にシンジらは集まっていた。

リツコはシンジが「もう大丈夫ですから」と言うのを信じて、3号機の移送を押し通した。

だからといって不安がなかったわけではない。

彼の言葉を信じたいのはやまやまだが、最悪の自体を考えなければならない立場上、やはり事情の確認はせねばならなかった。

 

「そいつはわしから説明させてもろてええですか?」

 

一番最初に沈黙を破ったのは、パッと見れば被害者とも思われた鈴原トウジだった。

 

「あなたは意識を失っていたのではなくて?」

「それがちいと違うんです」

「どういうこと?」

 

首を傾げるリツコの問いには返事をせず、トウジは黙って目を閉じる。

なんの特殊な力も持たないリツコでさえも、その刹那に彼の周りの空気の質が変わったのを感じられた。

空間が揺らぎ、チューニング前のテレビのように微妙に光が屈折する。

 

「!!」

 

彼の手前に浮かんだのは、微弱であるが目視することが可能なオレンジ色の光の壁。

誰にでもある力なれど、人が生身で具現化させることは出来ない。

 

「3号機に乗るよりも前・・・とっくに浸食されとったんですよ、わしの魂は。思えばこうなるンが、初めからわかっとたような気がするんですわ。バルディエルの迷いっちゅうんですか?それがわしの中で燻っとたっんです」

 

(そう・・・わしは心のどっかで自分がどうなるかわかっとったんや・・・)

(そして・・・3号機に乗ることがアイツの目覚めになってしまうことを知っとったから・・・)

(それがアイツの苦しみに繋がるとわかっとったから・・・・)

(わしは・・・どっちのために迷っとったんやろな・・・)

(結局最後の最後でビビってもうた、自分への言い訳ためかもしれへん・・・)

 

俯き加減で淡々と語るトウジ。

自分の体の変調に対しては、もう納得し動じていない様子だった。

リツコの方は目の前に突き付けられた事実を素直に受け止めることが出来ずにいた。

ほんの数時間前までは普通の中学生だった少年が、この様なことになるなど誰が予想できただろうか。

まして彼女は綾波レイを深く知る人間だ。

人間がそれを出来るということの事実が、いったい何を意味するところを最も理解している。

 

「浸食と言うよりも、俺達の場合はどちらかと言えば同化に近い」

「!!」

 

再び驚くリツコ。

見ればドアにもたれ掛かるようにして銀髪の青年が立っていた。

青年はゆっくりと歩み寄っていきながら、言葉を続けていく。

 

「こいつの中に自分の一部を感じたからこそ、俺は僅かながら理性を取り戻し、そしてユイナに引き上げてもらうことが出来たんだ」

 

隣に立つとやけに馴れ馴れしくトウジの首に腕を回し、もう片方の拳でコンコンと軽く頭を小突く。

 

「ともあれ、いつまでも俺とのことで悩んでくれるなよ?トウジ。おまえは守りたいものがあったから、エヴァに乗った。それでいい。俺のことは気にするな」

「へっ・・・お見通しか」

 

トウジは顔をしかめながらも嫌そうではなく、歳の離れた兄弟のじゃれあいのような絵だった。

このトウジとバルの関係はシンジとユイナの関係に似ていなくもない。

バルもユイナもお互いに人間の影響で、現在の姿もしくは性格を形成している辺りは同じである。

 

「じゃ、じゃあ・・・あなたが使徒!?」

「トウジが言ったように、俺の名はバルディエル。この姿は仮のものだ。本体は3号機の中さ」

 

軽く会釈をする。

しばらくリツコは事態の把握に手間取って、口をポカンと開けた少し間抜けな顔になっていた。

それなりに時間はかかったが、やっと得心が行ったのか小さく咳払いをした。

シンジらと共に「今」に立ち向かっているリツコだからこそ、短時間で復帰することが出来たのだろう。

 

「・・・初めまして、でいいかしら?私は赤木リツコ。ユイナの、書類上だけど姉をやらせてもらってるわ」

「赤木リツコ・・・か。まぁとにかく、俺はもうあんたらと対立するつもりはない。それにもう3号機と一体化しちまってるんでね。もし俺を消したければ3号機を破棄すればいい」

 

横で聞いていても何処か他人事のように聞こえた。

バルはそれを不快に思ったトウジに睨まれると肩を竦め、「はいはい、わかりました」とやっぱり気がない返事をする。

 

「・・・協力してくれるというの?」

「そう思ってくれていい。俺はこいつらとユイナのおかげでここにいられるようなものだからな」

 

再び沈黙。

シンジとトウジはリツコの次の言葉を待って息をのんだ。

当の本人であるバルはいたって平静という顔をしていた。

 

その時沈黙を破ったのはドアの開く音だった。

ドアの向こうからは、ユイナがマヤの押す車椅子に乗って現れた。

 

「ユイナッ!君は安静にしていなくちゃいけないんだろう!?」

「大丈夫大丈夫。車椅子だって大袈裟よ。別に歩けるのに、マヤさんが乗れってうるさくて・・・」

 

チロッとマヤを見上げると「当然です!」と胸を張っていた。

ユイナが苦笑いをするとそれは周囲に伝染していって、リツコも同じ様な顔をした。

 

「マヤさん、もう大丈夫ですから・・・」

「そう?・・・でも、一体何を話していたんですか?」

 

マヤは部屋の中を見回して、ふと見知らぬ人物がいることに気付いて身構えた。

このメンバーの中でネルフの制服に身を包んでいながら、雰囲気からして浮いている人物。

銀髪なのだからそれも致し方ない。

 

「あなた・・・誰?」

「・・・言っていいのか?」

 

答えの代わりに部屋の中にいる面々に承諾を求める。

 

「・・・3号機を運用するためには、あなたを切り捨てる事は出来なんでしょう?」

「ああ」

 

疲れたように肩を竦めるリツコは、迷子のように怯え縋る目をしているユイナを見ては溜息をついた。

「そんな目で見ないでくれ」と言う代わりに苦笑いをして頷くと、ユイナの表情がパッと明るくなった。

それを見るとリツコは少しだけだが楽観的になっている自分の存在を知った。

時に楽観主義であることは救いになるが、科学者の自分がそうなっているというのは軽い驚きと妙な感動を覚えた。

 

「鈴原君、あなたはどう思う?」

「・・・信頼してええと思います。少なくとも、わしはこいつのことを信じられると思っとります。今でも、こいつの苦悩、煩悶、その全てがわしの中にあるんです。それが嘘だとは思えへん。それに・・・・・・わしは戦いたいんです。こいつと一緒に守りたいんです」

「シンジ君とユイナは・・・聞くまでもないか。これで承認は得られたわけね。いずれ近い将来、説明しなきゃいけないことだし・・・・・・それにマヤはオペレーターだからこの事実には、私達を除いて最も近いところにいるものね」

「フッ・・・ご理解感謝する・・・ってとこだな」

 

気障っぽく言うとバルは改めてマヤ方に向き直る。

 

「さて・・・お待たせした。俺は使徒バルディエル。今回の3号機使徒化騒動の犯人ってわけだな。以後、お見知りおきの程を」

 

パーティーでタキシードを着込んだ紳士がするように深々と頭を下げるバル。

演技がかっているのはご愛敬だ。

しかし、その時のマヤの顔には刺々しい嫌悪の色が浮かんでいた。

童顔で実年齢よりも幼く見られる彼女であるが、その顔はいつもの愛らしさなど消し飛んでしまっていて、ハッキリ醜いと言えた。

(憎悪ってのはリリンをここまで醜くさせるか・・・)

特に感慨無さげにそんなことを思う。

 

「・・・先輩、使徒は私達の敵ですよ。たとえ、私達と同じ姿をしていたって!」

 

敵意に満ちたマヤの眼差しをバルは真っ正面から受け止めて、逃げようとも、対抗しようともしていない。

敵意を受けることが当然であるとばかりに直立不動の状態を維持している。

安易に「死」を選ぶのは逃げだ。

これは強者の論理と取れるが、バルは人から見ても、ユイナから見ても紛れもない強者である。

だからユイナに説かれたバルにとって、これは受けねばならぬ洗礼であると考えていたのかもしれない。

 

と、その間にシンジが割って入り、バルの代わりにマヤの敵意を身に受けた。

 

「マヤさん・・・あなたの言い分はわかります。割り切れって言うのも難しいと思います。けど、僕も信じたいんです」

「なぜッ!?今までシンジ君が苦しめられた敵なのよ!」

「それが彼等の本意じゃなかったとしたら?」

「・・・え?」

「もし、彼等がこの世界にある運命という名の鎖に縛られて、自分たちが望む望まないにかかわらずその道を歩まなければならないとしたら?」

 

突然調子の変わったシンジの物言いにマヤは目を白黒させて言葉に詰まった。

それでもシンジの吐き出す言葉は止まらない。

 

「世界の存在するもの全ては予め敷かれたレールの上にいる。その先には幾つかの未来が用意されているんだ。自分の意志で選ぼうとしなければ、ただ流されているだけならば、彼は敵のままだった。でも彼はいま選んだ。自分を縛り付けていた運命レールから、自らの意志で別のレールに乗ったんだ!僕は・・・それを、それを選んだ彼の意志を信じるしかないと思う」

 

流されている状況から自分を出すというのは酷く難しいこと。

これまでの使徒の状態から、そのレールに縛り付ける強制力は、人に対するそれより遙かに強いものと認識していた。

全てのものは因果の鎖に捕らわれている。

己の力でその鎖を断ち切ることが出来るかどうか、それが可能性を開けるかどうかということだ。

そしてバルは鎖を断ち切った。

彼の意識はサードインパクトを起こすという、忌まわしきプログラムに勝ったのだ。

 

「・・・サンキュ、碇シンジ。おまえに言われると何か嬉しいよ」

 

言い終えたシンジの肩に手を置いて、バルは少々男臭い、ネルフの誰かさんと似たような笑みをつくる。

 

「ええっと・・・たしかマヤっていったな、あんた」

「ええ・・・そうよ」

「まぁ・・・こいつは単なる好奇心だ。別に深い意味はないから気にしないでくれ。・・・俺にはどうもそのあんたが抱いている嫌悪感が理解できないでね。そりゃあ、敵に対して普通は穏やかな感情ってのは抱かないだろうけど、あんたの抱いている思いはそれ以上に激しいものだ」

「それは・・・」

「さっき言ったように俺達使徒が人の敵だからか?」

「そ、そうよ!訳の分からない力を持った・・・化け物じゃない!!」

 

 化け物・・・その台詞が飛び出した瞬間、あまり広くない部屋の中の空気はズシッと重くなった。

シンジとトウジは怒りに満ちあふれ、体を小刻みに揺らしている。

車椅子に腰掛けたユイナは唇を噛んで視線を床に落とす。

その変化に気付いたマヤは自らが触れてしまった禁忌の言葉を理解した。

しかし・・・後に退けなくなった口は、余計なことを更に紡いでしまう。

 

「な、なによ・・・わたしは間違ったことなんて言ってない!化け物は化け物よ!」

・・・黙れ

「人とは違う・・・あんな力を持った連中を化け物と言ってなにが悪いのよ!」

「黙れ黙れ黙れェッ!!」

「(ビクッ)シ・・・シンジ・・・君?」

 

(おいおい、そりゃさすがにまずいだろ、碇シンジ)

紅い瞳に銀の髪。

光り輝く白銀の翼。

 

「さっきから聞いていれば・・・・・見ろッ!僕もあなたの言う化け物だ!力を持った化け物だ!」

「・・・わしも同じ様なもんやな・・・」

 

(ハハハッ・・・・・ったく、バカばっかだな。面白い奴らだ)

「お前等、そのくらいにしておけ」

「バル・・・でも」

「いいから、ユイナをこれ以上悲しませるんじゃない。トウジ、おまえもだ」

「・・・しゃーないのぉ・・・」

 

二人は比較的あっさりと引き下がった。

バルのその姿は二人の兄のような、もしくは父のような威厳があるように思われた。

全体通して言葉遣いが悪いものの、決してふざけているというわけではないことは確かだ。

 

「・・・見たとおりだ。こいつらはリリンにあらざる力を持っているかもしれない。だが、正真正銘人間だ。別に・・・無理に俺のことを納得しろとは言わないさ。あんたが気に入らないのなら、俺を殺してくれてもいい。ただ、こいつらのことは理解してやってくれ」

「バルッ!あなたまだそんなこと・・・」

 

慌てて声をあげたユイナをバルは静かに手をかざして制する。

そして目を伏せ、おだやかな表情で首を二、三度横に振った。

 

「いいんだよ。どうせ元は死ぬ運命にあった身だ。だけど勘違いするな。もう楽になるために死を望んでいるわけじゃない。俺の命が何かを生むきっかけになるならそれも本望だって話だ。やるならとっびきり苦しくなる方法でやってもらうってのも手だな」

 

バルの自嘲気味な台詞に、マヤは押し黙ってしまうばかりだった。

彼女の中にあった敵としての使徒のイメージとはあまりにかけ離れてしまっていたため、混乱に陥っていた。

自分は何を嫌悪していたのかさえもあやふやで、不確かになりつつあった。

 

(わたしは・・・自分が正しい立場でいたかっただけなのかもしれない・・・)

(使徒が絶対の悪・・・そう思うことでこれまでの自分を行為の全てを正当化しようとしていたのかもしれない・・・)

(だとしたらわたしはいったい何・・・?)

 

「マヤ・・・」

「・・・・・・・・・わかりました。でも・・・まだ本当に納得できたわけじゃありませんから」

「それで構わない。十分だ。これから俺のことを信頼できるかどうかは、あんたが自分の目で見て判断してくれればいい」

 

マヤは口を真一文字にキッと結び、無言でリツコに対して一礼すると部屋を後にした。

それまで少し刺々しくなっていた空気が、いくらか過ごしやすくなる。

バルは備え付けられている椅子にさも疲れたというような素振りで身を預けた。

そして何か言いたげなユイナに舌を出して少し戯けて見せる。

 

「・・・ごめんなさいね。あの娘、潔癖性だから・・・。後でもう一度私から話しておくわ」

「僕も熱くなっちゃって・・・ダメですねこんなんじゃ」

「・・・アタシ、少しだけマヤさんが拒絶する理由がわかる。リリンは自分と違うモノを排除するきらいがあるもの。リツコ姉さんとかは特別だわ」

「だが・・・真実を知ったらどうなるかな?」

「「「真実?」」」

 

ユイナを除いた三人が同時にバルを見る。

 

「なんだ、ユイナ。おまえ話していなかったのか?」

「ええ・・・この世界の使徒に関しては不確定な要素が多かったから」

「だが知っておくべきこともある」

「かもしれない・・・」

「しかたねぇ、俺が話してやるよ。いいかい?この世界における人と使徒は同種の存在なんだ」

「同種?たしかに固有波形のパターンは酷似しているけど・・・」

 

リツコが?を顔に張り付けて問い直すとバルは深く頷く。

 

「人・・・つまり俺達がリリンと呼んでいるものたちもまた、使徒の一人だってことさ」

「私達が使徒!?じゃ、じゃあ、他の使徒も多数存在するの?」

「いや、それはない。俺達は唯一体の独立した個体生命だ。対するリリンはいわば未完成の群体だな」

「ぐ、ぐんたい・・・」

「気を悪くしないでくれ。だいたい俺自身、自分が完成された生命だなんて思っちゃいない。むしろリリンの方が出来損ない故に、まだまだ完成していくための多くの可能性を秘めている。俺は・・・トウジに触れてそれを実感させられたよ」

 

それはシンジ達が既に実践していること。

この繰り返す世界の中で、おそらく人間達は様々な可能性を示して見せただろう。

たとえ結果が一様に破滅に向かってしまったとしても、そのプロセスは多岐に渡ったはずだ。

移りゆく世界の中で多くの反応を示した可能性の粒子たち。

それが人。

 

この後はシンジとトウジがついていけない世界に会話が突入していった。

バルはさすが使徒本人だけあってか、その方面の知識はユイナ同様リツコとタメを張った。

少年二人にとっては全くちんぷんかんぷんであったが。

 

 

「じゃあ、俺は3号機の中に引っ込んでるぜ。用があったらトウジに言ってくれ。俺とトウジは繋がっているからな」

「ええ、これからよろしくね。バルディエル」

「こちらこそ、ユイナの姉さん。あと、バルでいいぜ」

 

満足げなリツコの後ろには頭を抱えたシンジとトウジの姿があった。

 


 

「また仲間が増えたのはいいけど・・・本当に使徒とはね・・・・」

 

翌日、ネルフ本部・3号機の前で顔合わせとなった。

まだバルは他のネルフのスタッフにはその存在が秘密だが、例によって戸籍を捏造するための準備はリツコによって整えられている。

そのうち戸籍を持った人間としてネルフに就職することであろう。

アスカは呆れ顔で自分よりも頭一つ以上飛び抜けているバルを見る。

見上げるという行為がどうも気に入らない。

 

「まあよろしく頼むぜ。惣流・アスカ・ラングレー。それに綾波レイ」

「フルネームで呼ばないでくれる?」

「ハハッ、わかったアスカ。よろしくな」

「誰が名前で呼んでいいって言った!」

 

スカッ・・・

 

気合いと共に放たれたアスカの渾身の平手打ちは、虚しく空を切った。

かわしたバルは実に涼しい顔で、小憎らしいほどだ。

 

「まぁまぁ、気にするなよ」

「・・・ったく、なんでかしら。あんた見てるとイライラしてくるわ」

「その答えは簡単だ。アスカ、おまえが以前俺に負けているからさ」

「・・・・・・・・・あ、あのときはよくも!!」

 

スカッ・・・

 

「おいおい、おまえは学習能力がないのか?」

 

嘲笑うかのようなバルの態度にアスカはきれそうになったが、大きく深呼吸をして気を落ち着けた。

バルは「おっ」と少し感心するような感じで、軽い息を漏らした。

後ろでヒヤヒヤしていたシンジは「アスカも大人になったなぁ」と思っていた。

こんなことを考えていることを本人に知られたら鉄拳ものだ。

 

「・・・ハァ・・・あぁっ、もう!とにかく、これで仲間が増えた、それでいいのね?」

「ほう、いやに納得するのが早いな」

「もう今のあたし達は何が来たってそう簡単には驚きゃしないわよ。ユイナの言葉を借りれば、これも一つの可能性ってことでしょ?」

「可能性の一つか・・・そうだな。俺達自身がアダムから生まれた可能性だ・・・」

 

黙っていたレイはおもむろにバルの手を取った。

バルはそこから伝わる温もりが心地よい。

 

「バルディエル・・・あなたも人になれるわ」

「おまえが言うとなんとなく説得力があるな。まぁ・・・そうだと良いんだが」

 

かくして3号機絡みの一件は一応の幕を閉じる。

 


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後書きみたいなもの。

 

今回は全体通してほぼシリアスでした。(というか、バルが喋りすぎ)

ある意味で「WING」はユイナとバルが主人公かも。(^ ^;;

 

よくよく考えてみると、純粋な人間(という言い方は正しくないかもしれないが)がアスカだけなんですよね・・・。

シンジは翼のおかげでかなり強いし、レイは先天的にA.Tフィールドを張れる。

で、今回はトウジが半使徒化・・・特殊な力を持っていないのはアスカだけ。

う〜む・・・これは問題アリか?

とはいっても、エヴァに乗った場合に特殊な力を発揮するのはシンジとトウジ(正確にはバルディエルとしてだが)であり、レイもそういう点ではアスカと扱いが変わらないんですけどね。

 

ちょっとここに翼とバルディエル絡みの現状についてだらだらと書いてみました。

 

それじゃ、また。

 

苦情・感想等お待ちしてますんでこちらか掲示板にお願いします。

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