力を使うとき、僕の心と体は言い得ない高揚感にとらわれる。

それが何なのかはよくわからない。

身を委ねていると酷い快楽が待っているような・・・そんな気がする。

 

力。

強い力。

 

・・・大丈夫。

僕は何も変わっていない。

僕は碇・・・碇シンジだ。

 

僕はその時までそう思っていた。

そう・・・・・・それが起こる直前まで。

僕の認識は甘かったことを思い知らされた。

 

 

 

 

 

WING OF FORTUNE

第弐拾六話 過信

 

 

 

 

 

その日、僕らは学校を全員で早退してネルフ本部に向かっていた。

加持さんから説明を受けて、午後四時、ネルフ本部を含んだジオフロント全体の電力供給が絶たれるよりも先に本部入りするためだった。

ユイナやアスカはお弁当がゆっくり食べられないって少し不満そうだったが、夕飯に二人の好きなものを作るから、と二人をなだめることができた。

最近は違うところの多い二人だけど、こういう基本性質はあんまり変わっていないようだ。

なんだかそんな二人が可愛らしく思えて仕方ない。

 

ついつい笑ってしまったら、二人に息のあったユニゾンで突っ込まれてしまった。

こんなやり取りをしていると、自分たちが戦っている現実というものを忘れてしまいそうだ。

 

 

 

「それにしてもゼーレって結構姑息なことするのねぇ」

「と言うか、自分たちの下部組織の構造を知らないなんてお間抜けだと思わない?」

 

アスカとユイナは今回の一件についてこんな事を言っている。

まぁたしかに、それはかなり皮肉を込めてはいるが事実なのだろう。

あまりにも人任せで、無責任すぎる。

他人の力を使って己の理想を叶えようとしているのだから、身勝手もいいところではないだろうか。

 

「ねぇシンジ、さっきから黙り込んでどうしたの?」

「え・・・?あ、ゴメン」

 

僕はいつの間にか黙り込んでしまっていたらしい。

 

何故だろう?

心がざわついている感じがする。

気が付くと手がまた痺れ始めていた。

 

「?」

 

ユイナが覗き込んできたので慌てて僕はその手をポケットの中にねじ込んで、笑顔を作った。

それでも笑顔が不自然だったのか、ずっとユイナは訝しげに見上げてきている。

僕はそれ以上どうすることも出来ず、ただ笑いを顔に張り付けたまま、集団の先頭を歩き出した。

アスカを追い抜くと少し不満の声をあげていたが、それもほとんど僕の耳には言葉として聞こえてこない。

痺れが全身に回り始めていた。

そして・・・心にも。

 

駅に着くとようやく異変に気がついた。

 

 

「なんでだ・・・?もう停電が始まっている?」

 

周囲に視線を配るとジオフロントどころか、街が沈黙していた。

元々生活臭の薄い街ではあるものの、これではゴーストタウンと大差ない。

むしろハイテクのゴーストタウンの方が気味が悪いかもしれない。

 

「停電が早められただと・・・?まさかリョウジが・・・いや、それはない。アイツが裏切ってるってことはないはずだ・・・。だとしら・・・」

 

僕の少し後ろで、バルが顎をさすりながらブツブツと言っている。

そしてハッとした顔になって目を見開いた。

 

「ますいッ!リョウジが危ねぇ!」

 

そう叫ぶとバルはパッとその場から消える。

たまに目にすることがあるわけだが、やっぱり心臓に悪い。

知らない人が見ていたらどうするんだろうと、ついつい辺りを見回してしまう。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

 

アスカが狼狽した声をあげたとき、足下が揺れた。

一瞬、地震か?と思ったが、それは違っていた。

僕の中の何かが違うと言っていた。

 

「みんな・・・使徒が来たわ」

「みたいやな・・・」

 

綾波とトウジが同じ方向を睨んでいる。

僕もそれに習って視線を投げた。

そこには半球体に足が生えた今まででも特に妙なスタイルの使徒が、こちらに向かってくるのが見えた。

足をせわしく動かして、みっともないとも言えるような動きで、それも異常なほどの速さで向かってきていた。

 

「何故・・・?こっちに来る」

 

痺れがどんどん大きくなってきている。

それは使徒が近付く度にどんどん大きくなる。

体の自由が奪われていく。

 

「シンジッ!なにボッとしとんのや!逃げンで!!」

 

腕を掴まれ、半ば引きずられるようにその場を駆け出したが、僕の心は何処かぼんやりとしていた。

 


 

少々時間を遡る・・・

 

加持リョウジは、停電工作時のアリバイ作りの為に葛城ミサトをマークしていた。

彼女と一緒にいることで少しでも不信感を拭おうと思ったのだが・・・それが正しいのかどうかわからないでいた。

と、角を曲がったところでミサトは立ち止まり、ストーキングをしていた男に声をかけた。

 

「あんたいつまで私の後にくっついているつもり?」

「・・・ばれていたか。なに、一緒に昼食でもどうかと思ってな」

「どういう風の吹き回しかしら?」

「さぁ、な」

 

不審そうにしているミサトに適当に言い訳をしていると、不意に周囲が闇に閉ざされた。

 

「な、なに停電!?」

「バカな・・・まだ時間はあるはずだ・・・」

 

思わず口にしてしまった科白が、あまりに迂闊なことだと自覚するのは時間がかからなかった。

気が付けば、ミサトの疑惑の眼差しが加持の目の前に来ていた。

どうあっても弁解は通用しそうにない雰囲気だ。

 

「時間があるってどういうことかしら・・・?」

「・・・・・・・・・」

「もしかしてあんた・・・」

「スマン・・・」

 

パシンッ

 

思い切りを叩かれ、頬がじんじんとする。

加持は何をするでもなく、ただ悲しげな光を湛えた瞳を心苦しそうに下に向けるだけ。

 

「あんたまで・・・あんたまで私を除け者にするわけ!?」

「葛城、落ち着いて聞いてくれ」

「言い訳は聞かないわ!!」

 

何度も頬を叩き、しばらくするとミサトは加持の胸を叩きながら泣いていた。

それはとても二十九の大人の女のするような仕草ではなく、まるで子供のようだった。

しかしそこでふと加持の頭の中で、

(十五年前から葛城の心の時計は、時を刻むことを止めてしまっていたのではないだろうか)

という考えが浮かんだ。

(だとするならば、ここで泣いているのは十四歳の少女だ)

 

「なんでよ・・・なんで私だけ・・・」

「葛城・・・」

 

カチャリ

 

「!!」

 

闇と静寂の中で、その僅かな音を加持の耳は確かに捉えていた。

咄嗟にミサトを抱えたまま、開きっぱなしになっていたドアに飛び込む。

直後には彼等がいた場所に、人の命を奪うための鉛の塊がぶつかり火花を上げた。

 

「チッ・・・そういうことかっ!」

 

加持は己の甘さを悔いた。

何時までもいい加減な報告をしてくるエージェントを放っておくわけがないと思っていたが、この時を狙うということをすっかり失念してしまっていたのだ。

考えてみれば絶好のチャンスだ。

(俺だけが別の情報で踊らされて、予定よりも早い停電で混乱させるか・・・いいようにやられたな)

(そして喩え俺を殺し損ねても、俺はネルフから裏切り者扱いを受けるというわけか・・・)

 

「か、加持これはいったい?」

「・・・葛城。俺がもし生きて帰ってこられたら、伝えられなかった言葉を伝えるよ」

「加持?」

 

一瞬呆けたような顔をしたミサトに、加持は唇を押しつけた。

ミサトは最初暴れるような様子を見せたが、すぐに大人しくなる。

心の中で詫びを入れながら、加持は唇を離すと少し呆けたようになっているミサトに首筋に当て身を入れて意識を奪った。

 

「スマン・・・葛城」

 

そっと床に寝かせたとき、意識を奪われたはずのミサトの頬を、一筋の光るものが流れ落ちていった。

それが・・・加持には罪の形であるように思えた。

 

もう一度額にキスをすると、銃を手に加持は闇の中へと身を投げ出す。

 


 

「どうして?どうして使徒が追っかけてくるのよっ!」

 

アスカは走りながらもいつもの調子よりも幾分苛立たしげに言う。

その隣を走っているユイナは誰よりも沈んだ表情だった。

 

「・・・僕が食い止める。みんなは本部に急いで」

 

僕は腕を引っ張っているトウジのを振り解いてその場で立ち止まり、使徒に向き直った。

みんな信じられないといった顔で振り返った。

そして口々に

 

「なにしとるンや、この阿呆が!」

「バカシンジッ、早く来なさいよ!」

「碇君・・・ダメ」

 

僕は目を細めてみんなを見やった。

みんな怒っているとの呆れているの半分ずつだろうか。

その視線は俯いているユイナのところで止まった。

 

「ユイナ・・・」

「・・・ダメ。ダメよ。そんなのダメよ!」

「・・・・・・・・・」

「そんなことしちゃダメ!!」

「ゴメン・・・でも大丈夫だから」

 

根拠のない自信。

そう・・・それは宴の始まりとなる・・・僕の過ち。

 

頭上が影に覆われ、見上げるとそこには大きな目玉で僕を睨んでいる使徒がいた。

 

「・・・僕が相手だ」

 

翼が現れ、重力の束縛から体が解き放たれ始める。

 

「ダメェェェッ!!シンジィィィィッ!!!!」

 

ユイナの絶叫を背に、僕は舞った。

 


 

泣き叫び、滅茶苦茶に暴れるユイナを、トウジが羽交い締めにしてどうにかその場を離れ始めていた。

悔しいことだが、トウジやレイ、ましてアスカには生身で使徒に対抗することは出来なかった。

シンジが戦い始めたため、もう止めることさえ出来ない。

苦汁をなめる思いで、本部を目指していた。

 

「放してっ!シンジを、シンジを止めるの!」

「落ち着いてユイナ。あなたがそんなでは私たちもどうしたらいいかわからなくなってしまうわ」

「そうやで、冷静になれや」

「放してよぉ!!」

「いい加減にしなさい!!」

 

パシンッ

 

「そ、惣流・・・なにもそないせんでも・・・」

「フンッ、分からず屋は痛い目を見ないとダメなのよ」

 

真っ赤になった頬に手を当てて、ユイナは呆然として地面にへたりこんだ。

いつもは活発な光の宿った瞳は焦点が合わずくすんでしまっている。

アスカは片膝をつき、肩に手を置いて目を見るように促す。

 

「いい、ユイナ?今、あたしたちがすべきことはなに?」

 

まるで子供に言い聞かせる親のような言い方で問い掛けている。

穏やかだが、何処か厳しい調子だった。

 

「・・・使徒を倒すこと」

「そうね。じゃあ今から何をするの?」

「・・・エヴァに乗る・・・」

「わかってるじゃない。なら急ぐわよ。どっちみちあんたの力じゃシンジを止められないんでしょう?ならエヴァに乗るしかないじゃない」

 

俯いたままだが頷く。

まだ引っかかるものはありそうだが、アスカは上出来だ、とレイとトウジの方を見る。

 

「そうと決まったら急ぐわよ!」

「なぁ・・・わしはここで待っとってええやろか?」

 

せっかく気合いを入れたところで見事に水を差してくれたこの一言。

ちょっとばつが悪そうに切り出したトウジに、アスカは完全に呆れたという顔をした。

 

「あんたバカァ?ここにいてどうするのよ」

「いや、バルが3号機を持ってきてくれればええわけやし・・・」

 

トウジにはある程度これから先起こることの最悪の事態を大方予想できていた。

何故ユイナがそうまでしてシンジを止めようとしているのか、理由を彼は知っていた。

仮にも現在の彼はバルディエルの一部である。

バルが何か考え事をしていればその内容はわからないまでも、思案しているという意識を感じることは出来る。

つい先日、あまりにその雰囲気が強かったためにバルを問い質して話を聞いたばかりだった。

起こりうる・・・いや、恐らく起こるであろう未来に愕然としたのもその時だ。

 

使徒が愚鈍なのか、それともシンジの動きが早いのか、それはよくわからなかったが、シンジの動きが使徒を凌駕していることは明らかだった。

(最悪やな・・・このままやったら、バルの言うた通りになってしまうやないか)

苦虫を噛み潰したような顔を裏に隠し、トウジはアスカを見る。

その理由はアスカにはまったくわからなかったのだが、しばし腕を組んで思案した。

 

「・・・なるほどね。でもあんただけに任せるのはちょっとねぇ・・・」

「けどアスカ、少しでも早い方がいいわ」

「わかったわよ。バルとは繋がっているんでしょう?さっさと連絡とっちゃいなさいよ」

「ああ、そっちも気ぃつけろや」

「誰に向かって言ってるのよ。行くわよ、レイ!」

「ええ、急ぎましょう」

 

トウジを残して三人は駆け出した。

その背を見送りながらトウジは沈んだ調子で呟く。

 

「シンジ・・・おなごを泣かせるなんぞ男として失格やで・・・」

 

頭上から降り注ぐ瓦礫を壁で防ぎながら、トウジは戦いを見守っていた。

 


 

加持は既に二人の敵を打ち倒していた。

相手は暗視用の装備は万全。

対する加持は己の感覚を頼りにするほかないという状況で、相手の予想以上の抵抗をして見せていた。

 

「チッ、あと四発か」

 

マガジンの残弾を確認して舌打ちをする。

もう予備のマガジンはない。

命を簡単に奪える武器も、暗闇の中では酷く頼りなさ気に思えるのは仕方のないことだろうか。

 

「さて・・・葛城にああは言ったものの・・・自信が無くなってきたな」

 

加持らしくない、弱気な言葉を吐かせるほどみに状況は芳しくない。

構造が頭に入っているだけに、何処をどう逃げたらいいかは図が浮かんでいるのだが、闇の中ではそれが100%生かし切れてはいなかった。

それどころか不本意ながらも包囲されつつあった。

 

後ろで足音がし、自分が走っている通路の先からも足音がした。

加持は正面の敵を撃つ体勢をとる。

 

銃を撃ち方で 単発ではなく、同じ狙いに二発続けて撃つというものがある。

これは対象を確実に殺すことを前提としている手法だ。

威嚇や敵の無力かを狙ったものではない。

殺すための、命を奪うためだけのやり方なのだ。

現在、加持がおかれている状況は撃ちもらしが決して許されないのだから、これを行うことは当然と言えた。

しかし残弾が少ない状況では、この行為は綱渡り的なものだった。

確実にやらなければ危険だが、弾がなくなってしまってはこれもまた問題である。

加持はこれから進むその先に敵がいないことを祈りながら、現れた気配に向けてトリガーを引いた。

 

暗闇の中でも弾丸は確実に敵の急所を貫いた。

短いうめき声を上げ、グラッと影が揺れる。

それを確認しながら、出来るだけ足音を殺しつつ加持は角を曲がった。

 

「!!」

 

待っていたのは複数の銃口。

丁重なおもてなしに無駄だとわかっていながら、加持は銃を捨て両手を上げて降参を態度で表した。

影の顔形は加持から見えなかったが、そのときニヤリと口元が歪められたのを感じた。

次の瞬間、激しい銃声と火花が辺りの闇と静寂を切り裂いた。

 


 

銃声は本部内に入ったアスカ達の元にも届いていた。

あまり耳慣れない音にレイを除いた二人はビクッと体を震わせた。

 

「・・・銃声ね。もしかしてバルはこのために焦っていたの?」

 

一人淡々としているレイは銃声のした方向をに向き直った。

暗闇といえど構造が頭の中に入っていて、尚かつ体に染みついているレイには、その音の方向が正確に把握できているらしい。

いまは頭の中で地図を広げて現在地とその現場の位置関係、ならびにそこまでの最短ルートを弾き出している途中だ。

 

アスカはある意味で上の使徒のことよりも銃声に驚いていた。

まさか自分たちの庭とも言うべきネルフ本部施設内で、銃声を耳にすることになろうとは思っていなかったのだ。

そんな中で瞬時に浮かんだ疑問は誰が、誰に向かって、ということだ。

だがしかし、いきなりの銃声にやや困惑気味の頭ではその答えを弾き出すには少々無理があった。

 

「いったい・・・何が起こっているの?」

「・・・アスカ、ユイナ、二人とも先にケイジに向かって。私は銃声のした方向に向かうわ」

「ちょ、ちょっとレイ!?」

 

レイは言うことを言うとアスカの呼び止める声に耳をかさず、さっさとその方向へと走りだしていた。

二人は呆気にとられて僅かな時間だがその場を動けずにいたが、再びケイジに向かって走り出していた。

 


 

「リツコ、準備にどれくらい時間がかかる?」

 

3号機と直結しているインカムにバルの怒声に近い声が響いていた。

声を聞いている二人の女性は常人離れしたスピードでキーボードを叩いている。

それでも作業が追いついていないのは事実だ。

 

「あと二分我慢して」

「早くしてくれ。時間がねぇんだ」

「そうは言っても予定より早かったから・・・」

 

発令所への電力は必要最低限のレベルで供給されていた。

どうやって、というと。

エヴァ用に開発していた特殊バッテリーを発令所用に接続しておいたのである。

大元は搭載するために小型軽量化が急務であったわけだが、こういった事に使うのであれば重かろうがなんだろうが関係ない。

要するに電力の確保が出来ればそれでいいのである。

ただそれは必要最低限の電力量であるため、空調はカットされ、内部は蒸し風呂状態になっているのだが、彼女たちの集中力はその程度のことで損なわれてはいないのさすがだと言えよう。

 

待つだけしかできず、苛立ちが募っていくばかりのバルに呼び掛ける声があった。

 

「・・・あ?トウジか?」

「どうしたのバル?」

「いや、ちょっとトウジがな・・・」

 

 

 

(はよう3号機で出てきてくれ!シンジが!)

 

(んだと・・・あのバカ一人で戦ってやがるのか!?)

 

(それだけやない。あいつ・・・)

 

(言わんでもわかる。おまえが感じているものは・・・最悪だな)

 

(早う止めンと・・・!)

 

(わかってる。わかってるがこっちも予想以上に停電が早くて対応がおっついてないんだ)

 

(見とることしかできんのか?)

 

(待ってろよ。俺も・・・すぐに行く)

 

 

 

(この感じ・・・マトリエルか)

バルはその時、マトリエルに頑張ってくれと声をかけたくなっていた。

皮肉なことに逆のことは考えなかった。

翼で守られているシンジはそう簡単に死にはしない。

それこそユイナよりも強い力を発しているなら尚更だ。

A.Tフィールドで圧死させられでもしない限り、ほとんどの衝撃をカットできるはずである。

これはエヴァに乗っているときは神経接続の関係上不可能なことだ。

つまり、生身の状態は防御面だけはエヴァ搭乗時よりも優れているかもしれないのだ。

 

「マヤ、あれは出せるか?」

「あれ・・・?・・・ダメだわ。射出口にも、兵装ビルにも配備していないから・・・最低でも三十分・・」

「クソッ・・・それじゃ遅すぎるぜ」

 

姿がそこにあったのならばレバーあたりに八つ当たりをかましていたかもしれない。

その声の響きから、明らかに事態は切迫しているということを認識せざるを得ないリツコとマヤ。

否応にも緊張感は高まりを見せる。

 

(シンジ・・・早まるんじゃねぇぞ!!)

 


 

僕は使徒の吐き出す溶解液のようなものをかわしながら、羽根を打ち出していた。

エヴァに乗っていた時に比べればその力はかなり貧弱だと言えたが、この使徒はそれ以上に貧弱だった。

 

羽根は形成された壁だけでなく使徒の体をも貫いた。

幾筋もの光が肉を削り、命を削る。

 

いける!!

 

使徒を倒せると確信したこの時、僕の中では何かが狂喜していた。

それが何かもわからずに僕は・・・・・・・・・

 

 

 

 

頭が真っ白になっていった。

痺れは快感に変わり、体を支配する。

 

最後に残った理性に浮かんだのは・・・ユイナへの謝罪だった・・・

 


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後書きのようなもの

 

・・・・・・・・・上手くまとまっていない気がする。

いつも大した代物じゃないですが、今回は特に酷いなぁというのが実感です。

けども今はこれがいっぱいいっぱいです。

ご容赦くだされ。

もしかしたら書き直したりするかもしれないです・・・

 

苦情・感想等お待ちしてますんでこちらか掲示板にお願いします。

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