「え〜、では、我等が碇シンジ君の快気と、碇ユイさんの現世回帰を祝して・・・乾杯!!」

 

司会者を買って出たミサトが一杯目のビールを一気飲みし、宴は始まった。

子供らはさすがにアルコール抜きだが、それでもかなりのハイテンションだ。

 

「よっしゃ、ここで喰いだめしとくでぇ!」

「鈴原、今日はシンジとおばさまが主役なんだかちょっとはひかえなさいよ!」

 

一郭ではもういつもの小競り合いが始まっていた。

みんな止める気はなく、逆にやし立てるような雰囲気がなきにしもあらず。

その他、レイはユイの横で騒ぎとはまったく関係ないとばかりに淡々と箸を動かしている。

実際は淡々としているように見えて、ユイと何か会話をしているらしく、時折表情に変化が見られた。

それはどれも陽に属するものだ。

 

またクールに決めているアダルト組がある。

バルとリツコ、マヤがミサトから少し距離を置いていた。

 

「ふぅ・・・お酒が美味しいわね」

「ああ、まったくだ。やっぱり酒は楽しいときに飲むに限るな」

「そう言えば先輩、楽しいときに飲んでいる人は笑い上戸になるって話ありましたけど本当ですかね?」

「・・・確か、お酒を飲んでいるときの経験の積み重ねでそうなると思ったけど・・・ま、ミサトには関係ないわね」

「「同感だな(です)」

 

そうしてもう一人の主賓、碇シンジはというと・・・

 

「あ、ユイナ、そっちの火を止めといて」

「これね?」

「うん」

 

台所で何故か奮闘していた。

 

 

 

 

 

WING OF FORTUNE

第参拾四話 宴

 

 

 

 

 

 

検査の結果、特に障害も見られないと判断されたユイ、そしてユイナはすぐに退院することを許された。

退院後は思いっきり抱き締められ、真っ赤になって藻掻いているシンジの姿があった。

だがシンジが逃げようとすればするほど、ユイの悪戯心はヒートアップして退院直後だというのに元気に走り回っていた。

逃げながらシンジは元気そうな母にそっと安堵の息をもらしたが、それと恥ずかしさは別問題である。

 

「母さん、いい加減にしてよ!」

 

最終手段として飛んで逃げようかと思っているシンジ。

 

「シンジは母さんのことが嫌いなの!?」

 

そういう問題じゃないだろ、と心の中で涙する。

(だいたいなんであんなに体力があるんだよ・・・ずっとエヴァの中だったのに・・・)

 

そんな親子のやり取りをやや呆れ気味に見守っていたのは、他のチルドレンと出張者抜きのネルフトップスリーであった。

銀髪の青年は笑いを噛み殺しきれずにくぐもった笑い声を漏らし、女性二人はそれぞれに後でからかうネタが出来たと喜んだり、意外な一面に驚いたりしていた。

 

「やれやれ、さすがのシンジも母親の前じゃ形無しだな」

「ユイさんってもっと学者肌な人かと思っていたんだけど・・・」

「シンジ君の話によると、あのユイさんは彼の母親のユイさんらしいわ。知識は持っているらしいのだけど、性格的には主婦なのでしょうね」

「へぇ、そうなんだ。でもよく混乱しないわね。複数の記憶を共有しているんでしょう?」

「まだ詳しいことはわからないわ。でも、記憶というより単なるデータなのかもしれないわね」

 

腕組みをして、リツコはシンジを捕まえて頬ずりをしているユイを見る。

シンジよりもむしろユイの方が子供のように見えてしまう光景に、リツコも苦笑した。

 

「データってどういうこと?」

「私たちの場合は、自分で経験したことでしょう?でもユイさんの場合は他人の経験でしかないと思うのよ」

「つまり・・・実感がないってわけか。まあ不要なものの方が多いんだろうけどな」

「そんなところね。本を読んでいるような感覚なんでしょうね」

 

アダルト組がそんな考察をしているときにも、チルドレン組はちょっぴり不機嫌だった。

無論トウジは除外する。

心もち唇を尖らせていると、それに気付いたユイはクルッと方向転換。

一瞬、「?」が張り付いた顔をした三人の少女に向かってダイビングを敢行した。

 

「ごめんなさいね、シンジばっかりであなた達のことをかまってあげなくて」

 

演技なのか、それともそれが素なのか。

潤んだ瞳で腕の中の少女らをそれぞれに見やる。

 

「く、くすぐったいですよ、ユイさん」

 

と恥ずかしそうに視線を逸らしたのはユイナ。

 

「・・・・・・・・・」

 

無言になりながらも少し頬を紅く染めたのはアスカ。

 

「・・・・・・お母さん・・・」

 

包み込む暖かさに目を細めながらポツリと呟いてみたのはレイ。

 

それぞれに決して嫌そうではない。

抱き締められていることに安心感を覚えているようである。

 

「ふぅ・・・助かった」

「御苦労さんやな、シンジ」

 

やっと追跡を逃れることが出来たところでトウジにそう言われて、シンジは複雑そうに顔を歪めた。

同じ男としてなんとなくシンジの気分を察したトウジであったが、すぐにアスカらの様子に目を配っていた。

その目は珍しいものでも見るかのよう・・・・・・と言うか、実際に珍しいものなのだが。

 

「まっ、惣流も黙っとれば美人やしな」

「トウジ・・・そんなこと言ってると・・・」

「ん・・・?」

 

ヒュンヒュン・・・パカンッ

 

「物投げられるよって言おうと思ったんだけど・・・」

 

躊躇いがちに言うシンジ。

 

「・・・ちっと遅かったようやな」

「だね」

 

もう既にトウジの頭にはアスカの履いていた靴が炸裂している。

防御用のフィールド展開も間に合わなかったようだ。

 

このあとすったもんだの末に、ユイは葛城家の隣・・・つまり、アスカ、レイ、ユイナの三人と同居することになった。

ユイ本人の主張としてはシンジとレイを引き取る形で暮らしたかったようなのだが、シンジがそれを丁重に断ったのである。

理由はこれ以上恥ずかしいことは御免だったし、なによりまだユイとの距離を測りかねていたことにある。

シンジとて母親に会えた感動を抱いていないわけでもないが、なにせほとんど記憶にないのだ。

知っているのはアスカの母、キョウコの友人であったということぐらいなこと。

ゲンドウとのやり取りもなかった彼は、母がどんな人物であったのか全くと言っていいほど知らされていなかった。

偶に顔を合わせるのはよくても、一緒に住むとなるとどう接して良いのかわからず、今回はミサトの家事能力を引き合いに出して断ったのだった。

それにしてもかなり苦しい言い訳であり、理由としては不十分であった。

 

「シンジのけち」

 

結果、シンジに向けられたのはこんな子供じみた科白だった。

シンジが頭を抱えたのは言うまでもない。

 


 

ユイとユイナが退院した数日後、碇&葛城家ではちょっとしたパーティーが催されることになった。

狭いというわけでもないが所詮マンションのリビング、限界ギリギリくらいの人が詰め込まれた。

チルドレン、その友人、司令副司令抜きのネルフ新トップスリー、マヤ、そしてユイ。

しめて十二人。(チルドレン5、友人2、ネルフ関係4、ンでユイ)

この際、料理担当者が選抜され、半分罰ゲームでシンジとユイナ、なんとなく責任感を覚えたヒカリが参加した。

ユイも手伝おうかと言いだしたのだが、主賓だということで大人しくしてもらうことになった。

(なんで僕だけ・・・)

とシンジが陰ながら愚痴を漏らしたのも無理もない。

 

 

「なんかあの三人って時々、本当に同い年なのかって思っちゃうわよね・・・」

 

キッチンで奮闘する一人の少年と二人の少女を見やりながら、アスカは小さく溜息をついていた。

アスカはレイと一緒に、ユイとお喋りをしていたのだが、楽しげな声が聞こえてきたので覗いてみたのである。

そこには妙に生き生きとしている三人の姿があった。

 

「アスカちゃんはお料理しないの?」

「えっ・・・あたしですか?それは・・・その・・・」

「私たちはダメ・・・碇君とユイナに任せっきりだったから・・・」

「あっ、レイ!余計なことを言わなくていいの!」

「どうして?本当のことだわ」

「本当のことでもその・・・」

「そう、わかったわ。見栄を張りたいのね」

「ちっがーーう!!」

 

アスカとレイのやり取りはキッチンの方にも聞こえていた。

リビングをチラッと除きながらクスクスとヒカリは楽しげに目を細めた。

 

「アスカと綾波さんって仲が良いのね」

「仲が良いって言うのかしら・・・あれは。でも一緒に住んでいれば嫌でも気心知れた仲になるわよ」

 

同居人であるユイナは日常茶飯事と化しているため、あまり興味なさそうに作業を続けている。

このユイナの家事能力は実はシンジ譲りのものだ。

シンジとの融合状態にあったときに手に入れた能力であり、彼女本来の才能ではない。

微妙な味覚の差の関係で、作る料理に多少の差は現れるもののシンジのアシスタントとしては申し分ないだろう。

 

「そういうものかしら?」

「なんならアタシ達と一緒にしばらく生活してみる?世界が変わるかもよ」

 

ボウルを小脇に抱えてニヤッと意味深に笑うユイナ。

シンジは少しその笑顔に邪気を感じた。

そこら辺はなんとなくアスカの笑い方とちょっと似ているのだ。

 

「せ、世界が変わるだなんてそんなっ・・・女の子同士で・・・イヤッ・・不潔よ不潔ッ・・・・・・」

 

急に何を思ったのかヒカリは両手で子を覆ってブンブン顔を横に振った。

包丁を持っていたらかなり怖い。

 

「・・・どうしたんだろう、洞木さん」

「・・・刺激が強かったかしら。冗談なのに」

「刺激?」

「ああ、シンジは気にしなくていいのよ」

 

しばらくヒカリは妄想街道を突っ走ってくれていた。

それをほっといてシンジとユイナは着々と料理を完成させていくのだった。

 

 

「う〜ん、良い絵だ」

 

三人の料理中の風景と二人の少女と一人の女性の談笑する様子を、カメラ片手にシャッターを切りまくる眼鏡少年K・A。

頭の中ではこれからの販売プランが着々と組上がりつつあった。

 

「なぁトウジ、あの人って本当にシンジのお袋さんなのかい?」

「ああ、ほんまのお袋さんやで。改めて見るとえらいべっぴんさんやし、シンジはお袋さん似なんやろな」

 

ジュースをかっ喰らうトウジはユイを見ながらその微笑みにシンジを重ねてみた。

さすがは親子、どことなく似ている気がする。

(綾波も笑えば似とるんやろな・・・)

そう思ったが、レイが無邪気に笑う姿は容易には想像できなかった。

浮かんだのはユイナの顔だ。

(ほんまにあの司令に似なくてよかったなシンジ)

これこそがトウジの抱いた感慨の中で最も大きかったものだったのは間違いない。

正直なところ、あの髭面はトウジも苦手な部類に入っている。

シンジの父親でなかったら、いやシンジの父親であったとしても、夜道で出会おうものならば速攻で変質者と判断してフィールド展開してしまうであろう。

その髭と結婚し、一児をもうけたのがあのユイだとは俄には信じがたい事である。

(ほんまっ、女心っちゅうのはようわからんわな)

これが結論。

 

そんなこんなでしばらくすると用意は整い、仕事を早めに切り上げてきたミサトらが帰宅し、パーティーは始まったのだった。

 


 

「はぁ〜やれやれ、やっと落ち着けたなぁ」

「ご苦労様、シンジ」

「そっちもね、ユイナ」

 

シンジとユイナがやっと腰を据えた頃にはかなり出来上がっている人ばかりだった。

あまりのハイテンションぶりに、それまで働いていたシンジとユイナには少々ついていけなかった。

仕方ないのでちょっと離れたところで皆を見守っていたのだった。

 

「このパーティーって一応シンジも主賓よね?」

「まあいいんじゃないかな。みんなも楽しんでいるみたいだしさ」

「う〜ん、まあそうなんだけどさぁ・・・な〜んか釈然としないのよね」

「アハハッ、気にしたらダメだよ」

 

苦笑しながらユイナにジュースをついで渡す。

 

「ん、ありがと」

 

ユイナが受け取るとシンジも自分の分をコップに注いで、それから喉に流し込んだ。

準備で忙しかったため、潤っていく感覚が心地よい。

 

「・・・・・・・・・・」

「どうしたの?コップをジッと見つめちゃって」

「いやね、ちょっとミサトさんお気持ちがわかるなぁ・・・なんて」

「・・・そうね。でもあそこまでがぶ飲みはしないわ」

 

ユイナが呆れた目線を送ったのは空き缶の山を築いているミサトの姿だった。

宴の始まりからかなり経つというのに、まるでペースが落ちていない。

絡みに回っていないだけまだましだろう。

 

「ま、とにかくお疲れさま。押しつけられてもここまでやると達成感があるよ」

「うん。こういう充実感は悪くないよね」

 

戦いに勝利することはたしかに達成感も充実感もある。

だが・・・それに身を委ねるのは少し危険なような気がしていた。

こうして日常の中での充足を得られるのならばそれに越したことはない。

しばらく、のんびりとした時間が続けばいい・・・そう思った。

 

「・・・無理なんだろうけどなぁ」

「・・・そうね」

 

考えていることは同じ。

口に出さなくとも、会話は成立していた。

 

「こぉらぁー!そんなとこで二人して何やってるのよ!さっさっとこっち来なさいよ!」

 

「あらら、アスカがお呼びみたいね」

「だね。いこうか」

 

苦笑を突き合わせて二人は輪の中へ入っていった。

 

 

 

さてそれぞれを見てみよう。

 

ユイの周りでは・・・

アスカもアルコールに手を出したらしく、かなり陽気になってシンジに絡んでいる。

首に腕を回して酒を勧めているようなのだが、アルコールに免疫のないシンジはどうにか逃れようと藻掻いている様子。

後頭部から側頭部にかけて何やら柔らかい感触に包まれており、茹で蛸のようになってしまっていたりもする。

アスカ本人は気付いているのかどうかは怪しい。

 

「ちょっ・・・やめてよアスカぁ〜」

 

恥ずかしさでちょっぴり泣きが入っているシンジ。

その横では少し目がすわっているレイがいた。

 

「・・・アスカ・・・碇君はあなたのものではないわ」

 

睨み合う両者であるが恐らく宴が終わってしまえばコロッと忘れてしまうに違いない。

火花を散らす間にあって、ユイはニコニコと動向を窺っている。

 

「あらあら、シンジってばもてるのねぇ」

「母さぁん、呑気なこと言ってないで助けてよ」

「あらどうして?母さん嬉しいわ。これなら孫の顔を見る日も近いわね♪」

「ま、孫って・・・・・・」

 

絶句しているシンジを余所に、ユイは次なる標的をユイナに定めた。

 

「ユイナちゃんは立候補しないの?」

「えっ・・・その・・・アタシは・・・」

 

言い淀んだ隙をついてユイはユイナを突き飛ばしてトライアングルゾーンへ叩き込んだ。

やっとアスカの手から逃れたシンジが見たのはユイナを突き飛ばす、実の母の楽しそうな顔。

ある意味、邪悪だとシンジは思った。

 

「うわっ」「きゃぁっ」

 

気が付いてみればユイナがシンジを押し倒すような格好になっている。

すかさずシャッターを切った少年がいたのは言うまでもない。

 

十秒経過・・・動かない。

二十秒経過・・・まだ動かない。

三十秒経過・・・

 

「ちょっとあんた達、いつまでそうやってるのよ!!」

「ご、ごめんなさいシンジ」

「い、いいって・・・母さんが突き飛ばしたんだし・・・」

 

しばらく妙にギクシャクする二人、そして赤と蒼の瞳の視線もまた厳しい。

ユイだけはこの空気を楽しんでいるのだった。

 

 

その頃ミサトは・・・足下に空き缶の山を築いてご満悦のようだ。

料理をちゃんと食べているのかどうかも怪しかった。

 

トウジ、ヒカリの二人は特殊フィールドを形成しているので放っておく。

 

「すっ、鈴原・・・こ、これわたしが作ったんだけど・・・どうかな?」

「委員長がつくったもんが不味いはずないやろ・・・」

「え?」

「な、なんでもあらへんわ。飲むもんくれ」

「(クスッ)はいはい、わったわよ」

 

 

残ったリツコ、バル、マヤの三人はというと・・・

ここが一番まともだったかもしれない。

ミサトのようにがぶ飲みすることもなければ、トウジ&ヒカリのような特殊フィールドもない。

ユイと子供達のように騒がしくもなかった。

 

「ユイさんって、面白い人ですね」

「面白いねぇ・・・俺は玩具になっているシンジが哀れでならないけどな」

「私はバルに同意かしら」

 

意見が合い、ちょっと視線を合わせる。

そんな些細なことだったのだが、マヤは二人に懐疑の眼差しを向けた。

 

「・・・やっぱり先輩とバルって・・・」

「おいおい!それ(注:それとは・・・)をまた蒸し返すなよ」

「そうよマヤ。あれは誤解だって言っているでしょう」

 

二人の弁解を無視したマヤは缶ビール(500ml)を握りしめ、突如として一気飲みを敢行。

グビッグビッグビッ

止める間もないうちに飲み干してしまうと、雰囲気が変わっていた。

 

「ふんだっ、どうせ私はお子様ですよ・・・先輩に比べたら女としての魅力が足りませんよ・・・」

「お〜い、マヤさ〜ん?」

 

いきなりぶつくさ言い始めたマヤは、しばらくすると電源切れを起こしたエヴァのようにカクンと活動を停止した。

それもちゃっかりバルに寄り掛かるようにして。

あどけない寝顔のマヤに困った顔をするバル、それを見ておかしそうに顔を綻ばすリツコ。

肩を竦めたバルはマヤの身体を抱き上げると、シンジに言ってベットを借り、そこへ寝かしつけて帰ってきた。

 

「ご苦労様ね」

「まったく、マヤは子供なんだか大人なんだか・・・」

「あなたも似たようなものでしょう?」

「こっちの科白だよ」

 

また顔を見合わせて笑う二人。

 

「ついでだから聞いておきたいんだけど、あの後どうやって誤解を解いたの?」

「ん〜〜、ベットの上で」

「ブッ!!バ、バルあなた!?」

 

口を付けていたビールを吐き出し、なおも咳き込みながら涙目でバルを見上げる。

布巾を取ってリツコが吐き出したビールをふき取りながら、舌を出してバルは戯けていた。

 

「冗談だよ冗談。俺も誤解を解くためにそこまではやらない。ちゃんと話して納得してもらったさ」

「でもあの様子を見る限りでは、納得してなかったみたいじゃない」

「らしいな。まぁ時間が解決してくれることを祈るだけだよ」

「消極的なのはあなたらしくないわね」

 

思ったことを口にすると、バルはしかめっ面になって布巾をキッチンへ放り投げた。

 

「・・・下手に言い訳して泣かれるのも困る。涙は苦手だ」

「じゃあまた泣いたら、私のことも慰めてくれる?」

 

わざとらしく潤んだ瞳での上目遣い。

リツコが妙に可愛らしく見えてしまったのはバルの目の錯覚でも、酒のせいでもはないはず。

が、バルはしかめっ面を更に深めていた。

この二人の図は可愛い娘、それを叱ろうにも強く出られない子煩悩な親、に近いものがあった。

 

「あのなぁ・・・ちょっとは反省しろよ」

「フフッ、ごめんなさい。私も少しからかってみたくなっただけよ」

 

 

 

「なんか妙に仲が良くないあの二人」

「怪しいわ。姉さんまさかマヤさんからバルを?」

「・・・り、リツコに先を越された!?」

 

それに気が付いた三人は言いたい放題。

ともあれ宴は皆が疲れて寝てしまうまで、延々と続いたのだった。

 


本棚へ  TOPへ


後書きみたいなもの。

 

やばっ、ゲンドウが出てきていない。→(仕方ないからここで補足ゲンドウ

しかもバルとリツコの関係がちょっぴり怪しいものに!(汗)

何やってるんでしょうねぇ・・・・・・

断っておきますが三角関係を書くつもりはありません、あしからず。

 

こんなドタバタした状態で次回からは「TYPE B・B」に着手し、本編は少しの間お休みとなりまする。

時間的にはそのまま本編の続きなので、そのまま続編として考えていただいて結構ですが。

ただし、話の中心はバルになるのですこ〜し毛色が違うかもしれませぬ。

しかもまだほとんど(いや、まったく)書いてないし・・・

と、いうわけで次回更新は少し間が空くかもしれませんがご容赦を。

 

それと今回もお遊びがあります。

前回同様バレバレですが。

 

ページ自体のことを上げるといつの間にか四万ヒット到達していましたね・・・

目標として掲げている五万ヒットまで、もうあと一万切ったとは早いもんです。

では、これからもどうぞよろしくです。

 

感想等お待ちしてますんでこちらか掲示板にお願いします。

誤字脱字の指摘もあればお願いいたします。

inserted by FC2 system